フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
十代のメダリスト3人と元女王。
フランス杯で見た浅田真央の涙。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byREUTERS/AFLO
posted2016/11/14 17:30
大会会場の取材現場では「自信を失った」「全てを失った」と赤裸々な心情を吐露した浅田。再びその笑顔が見られる日を、待ちたい。
浅田真央の見せた涙。
演技後、テレビ局の取材に受け答えをしている間、必死で冷静を保っているように見えていた。そして答え終わった直後に報道陣の前まで歩いて来ると、それまで抑えてきたものがいっきに堰をきったように、浅田の頬を涙がつたいはじめた。
「ティッシュありますか」
浅田はそう言うと連盟関係者からティッシュを受け取り、後を向いて涙を拭いた。それから健気に呼吸を整えて、少ししてこちらに向き直った。
「まあいろんなことが重なって、こういう結果になってしまいました。やはり練習でうまくいってないので、本番でもこうなのかなという感じでした。滑りもそうですけれど、ジャンプもそうですし、すべてがしっくり決まってないなという感じはありました」
それでもステップはレベル4でしたよ、と言われると、「それだけは良かったなと思います」と、ほんの一瞬だけ笑顔になった。
「自分が望んで復帰してきた選手生活だと思うので……」
どれほどの痛みを抱えていたのかは口にしないものの、明らかな体調不良。それでもこの大会に出ることは、大切なことだったのか、と問われるとこう答えた。
「結果を見れば、本当に自分の中ではよくない結果で、自信を失ったんですけれど、これが全日本につながるバネになればいいなと思っています」
浅田はそれから、「自分が望んで復帰してきた選手生活だと思うので」と何度か自分に言い聞かせるように繰り返した。
「今回のこの悔しさを忘れないで、全日本では自分が滑れるありがたさというものを感じながら滑りたい。でも調子を上げていかないとそういう気持ちにはなれないと思うので、まず自分のコンディションをしっかり整えたいと思います」と言葉を結んだ。
普段は取材に応じる佐藤信夫コーチも、今回はノーコメントを貫き、浅田の体調についての詳細はわからないままだ。
全日本選手権まであと1カ月半。
できことなら、可能な限り体を休めて、しばらく回復に専念して欲しい。
12月に大阪で開催される全日本では再び浅田真央の笑顔を見ることができることを、ファンたちは願っている。