マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「育成指名でプロ野球」は是か非か。
教え子を送り出す監督の内心は?
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/11/10 17:00
磐田東高校時代の加藤脩平は、甲子園の地に立つことなく3年間の高校野球生活を終えた。プロでは花開くだろうか。
2年前にも、ソフトバンクに育成選手を送り出した。
山内監督は2年前にも、ソフトバンクの育成選手として、齋藤誠哉投手をプロに送り出している。
持てる能力をなかなか発揮しきれずに苦しんだ時期もあったが、しなやかな腕の振りから投げ下ろす速球を評価された長身サウスポーだ。
「明るくなった、友だちも増えた、きちんと話ができるようになった……。人と接するのが苦手みたいなところがあったヤツだから、そんな近況を聞くだけでもすごくうれしいですよ。野球のほうは、なかなか話が出てこないんだけどねぇ」
オフのウインターリーグにも派遣されて、育成選手ながら徐々にチャンスをもらえるようになってきた。
「かわいがってもらってます、なんてね。この前、電話で言ってましたよ。そんな表現できるヤツじゃなかったんですよ。成長してるのかなぁ……少しずつでも」
「コイツなら一軍でやれる」という確信があるか。
この秋、中日ドラゴンズでは、3人の育成選手が1年目、2年目で戦力外通告を受けた。
磐田東高の“すぐそば”で、そんな現実が今、ある。
「心配ですよ。支配下だって心配だと思いますよ。何年やらせてもらえるのか。すぐポイされるんじゃないのか」
育成選手には、3年間という期限が設定されている。
3年間で支配下登録されなかった育成選手はいったん自由契約となり、“先”のある選手だけが再び、育成契約を結んでもらえる。
「契約金だって、引っ越し代ぐらいしか出なくて。タダで拾ってきたもん、誰が大事にしますか!」
そんな激烈な表現で育成制度を疑問視する指導者の方もいた。
「脩平が行くジャイアンツだって、今年7、8人の育成が解雇になってますよね。中には1年目もいましたから、送り出すこっちにとっては、やっぱりショックですよ。ただ、そういうことは“結果”だからねぇ……。
要は“確信”だと思うんですよ、選手と監督の。入る時は育成でも、コイツなら支配下になれて、一軍でもやれる。だから送り出す、だから行く。それさえあれば、私はすごいことだと思うし、胸張って送り出せますよ」