マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「育成指名でプロ野球」は是か非か。
教え子を送り出す監督の内心は?
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/11/10 17:00
磐田東高校時代の加藤脩平は、甲子園の地に立つことなく3年間の高校野球生活を終えた。プロでは花開くだろうか。
社会人に進んだ齋藤の同級生が来年の上位候補に。
山内監督には、来年もう1つの“楽しみ”がある。
高校時代、ひと足お先にソフトバンクに進んだ齋藤誠哉と2本柱で投げていた鈴木博志が、社会人野球・ヤマハの2年間でぐんぐん成長して、今季は150キロに達した快速球を武器に、ストッパーとしても奮投している。
「誰かが止めないと、いつまででも練習してるヤツだから、そっちのほうが心配で……」
うれしそうに、山内監督が話してくれる。
「アスファルトの道、走るなんてやらなきゃいいのに、10キロだかロードワークやって、それで疲労骨折だって」
あきれながら、すごくうれしそうだ。
猛烈な逆スピンでミットをはね上げてくるような捕球感。数字のスピードだけじゃない。インパクトで破壊力を発揮できる快速球。
ヤマハ・鈴木博志は、2017ドラフトの上位候補に、今から挙げられている。
送り出したあとに監督ができる温かい“援護射撃”。
「2月のキャンプ、宮崎に行けば誠哉もいるし、脩平もいる。私、キャンプに博志を連れてこうと思ってるんですよ。先にプロに行って、キャンプで汗にまみれてる2人を見て、博志が何を考えるのか、ね。私が“心構え”みたいなことグダグダ言うより、1000倍ぐらい博志には効果があるでしょ」
楽しみだなぁ、と笑っている。
「それと、それ以上にね……」
快活に話し続けていた監督に、ちょっと間があった。
「それ以上に、誠哉と脩平の刺激になってくれたらね……。送り出したあとの監督ができることなんて、そんな“援護射撃”ぐらいなんだから、私はしてやりたいと思いますよ。そういう味方が必要な時期なんだからね、まだまだ」
2人目の“育成”を送り出す山内監督にも秋がやってきていた。