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大学ゴルフ部の仲間が気にする男。
岩田寛の「可愛さ」を知ってますか?
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph bySonoko Funakoshi
posted2016/11/03 08:00
10位以内に入ると、出場可能になる試合が増える。岩田寛にとって、その1試合ずつが大きなチャンスとなる。
松山英樹のキャディから勧められた1冊の本。
「今日はティショットは良くなかったけど、アイアンは今週は良かった。(昨季と比べて)全体的に良かった」
「やっと課題も見えてきた」
暗いトンネルの向こう側に視界が開けたことが、岩田の精神面を前へ向けている様子だった。
気持ちが前向きになった理由は、もう1つあった。松山英樹のバッグを担ぐ進藤大典キャディから1冊のメンタル本を勧められ、「それを買って読んだら、今週は良かった」。
ハリケーンに翻弄されて今季のフルシードを逃した不運をも岩田はポジティブに受け入れていた。
「残念だったけど仕方ない。いつか、これがいい方向に行くんじゃないかなって、そう考えました」
恨みがましいことは、一切言わなかった。
東北福祉大の仲間たちが、みんな彼を応援している。
折しも同じ週、太平洋を隔てた中国・上海で松山が世界選手権シリーズのHSBCチャンピオンズを圧勝し、世界を驚かせ、日本を沸かせた。相棒として松山を支えた進藤キャディは、岩田の最終戦ラウンドを前に、同じ東北福祉大出身どうしの同週ダブル優勝を祈っていた。
岩田が5位で終了すると「惜しかったですね~」と残念がった進藤。岩田の口からメンタル本の話が出たことを伝えると、「その本、日本オープンのころに勧めたんですけど、あいつ、ちゃんと買って読んでるんですね」。その行間からは「寛って、可愛いヤツでしょ?」という進藤の声が聞こえてきた。
そう言えば、石川遼のバッグを担ぐ佐藤賢和キャディも、以前、米ツアー会場で初めて挨拶を交わしたとき、「“ウチの岩田”を、どうかよろしくお願いします」と、我がことのように心配していた。
今年の夏、全米オープンに出場した宮里優作からも「岩田がお世話になってます。これからも、よろしくお願いします」と丁寧な挨拶をいただいた。
岩田、進藤、佐藤、宮里。4人とも東北福祉大学ゴルフ部の同期。3人からこんなにも心配され、応援されているのは、岩田の人柄が彼らにそうさせているからにほかならない。