マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
大山悠輔と中塚駿太のWプロ入り。
白鴎大・黒宮監督はただただ祈る。
posted2016/11/01 07:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
NIKKAN SPORTS
白鴎大学から最初にプロに進んだ飯原誉士(外野手・'05年ヤクルト指名)はドラフト5位だった。
翌年のドラフトでソフトバンクに指名された高谷裕亮(捕手)は3位。'11年のドラフトで同じチームに進んだ塚田正義(外野手)も3位だった。
そして、その後白鴎大からプロ入りした選手たちも、みんなドラフトの下位か、育成枠での入団だった。
「それが、今年は1位と2位でしょう。ウチの選手に差をつけるわけじゃないですけど、やっぱり責任の大きさ、感じますよ。頼むから、期待に応えてほしいー! って」
白鴎大学・黒宮寿幸監督が体の奥から絞り出すように声をあげた。生まれ育った栃木の言葉の響きが、耳にやさしい。
やっぱり期待より不安ですよ、ほんとのところ。
内野手・大山悠輔、阪神タイガース1位。
2016ドラフト候補生の中で、唯一の右打ちの長距離砲といってよいだろう。三塁、遊撃も守り、二塁からシングルヒットで生還できる脚力を持つ。
投手・中塚駿太、埼玉西武ライオンズ2位。
日本ハム・大谷翔平の“160km”を追いかけられるとすれば、まず田中正義(創価大)とこの超大型右腕だろう。192cm、102kgの雄大な体躯から投げ下ろす快速球は、まさに大谷さながらのきれいな逆スピン。コンスタントに140キロ後半をマークする。
黒宮監督は、共に無名の高校時代から人知れず注目し続けた。手元に置いてからの4年間は、時にきびしく、時にあたたかくその成長を見守ってきた愛弟子の2人だ。
「どこの親御さんも同じだと思うんですけど、やっぱり期待より不安ですよ、ほんとのところ。彼らのすばらしいところも知ってますが、まだ幼い面も誰よりもよく知ってますから。でもね、自分があんまり不安を表に出して、彼らに余計なプレッシャーになってしまってもいけないし」