マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
大山悠輔と中塚駿太のWプロ入り。
白鴎大・黒宮監督はただただ祈る。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/11/01 07:00
強打の野手として注目された大山(右)と、150km超の剛速球を投げ込む中塚。大山は金本監督たっての希望で1位指名を受けた。
「こうなったら、1位という現実を勲章と考えて……」
「そうですよね……。大山が六大学や東都にいたら、もっと大騒ぎされてたでしょうね。守れるっていうのが大きいですよ、足だって悪くない。右で飛ばせるバッターも、ほかにいませんものね。今年のドラフト候補を見渡して冷静に考えれば、貴重な存在だったといえるのかもしれませんよね」
ただ送り出す者の本音としては“2位だったら……”の思いは正直、あるという。
「飯原や岡島(豪郎・楽天・外野手)みたいに、わりとひっそりと入って、じっくり力をつけて、後で考えたら結構いいじゃないこの選手みたいな。そういう線でいってくれてもよかったかなぁ……って」
そんな弱気じゃいかんですね、と黒宮監督、すぐに気を取り直した。
「こうなった以上は、1位という現実を勲章と考えて、タイガースというチームの期待、金本監督の期待に命かけて応えていくことが、彼の使命ですからね。返していけばいいんです」
半分は、自身に向かって言い聞かせているようなもの言い。
教え子の行く末とは、ある意味、送り出した者への答え合わせでもあるのだ。
中塚は真っ白な子ですから。マイペースなヤツでね。
「中塚はまだ真っ白な子ですから。ウチのスクールカラーがブルーで、西武さんもブルー。白鴎のブルーから西武のブルーに、染め替えてもらえばいいんですよ」
3年の秋から実戦で投げ始め、そしてこの秋のリーグ戦で野球人生初の完投を、完封で飾った中塚駿太は、まだ“夜明け前”みたいなピッチャーだという。
「あんまり大きな期待かけても、ボクじゃ無理ですよ……とか、笑いながら言いかねないですから、中塚は」
ほんと、マイペースなヤツでね。黒宮監督がおかしそうに笑っている。
「この前、中塚に言ったんですよ。お前、ウチでひとシーズンしか働いてないんだから、もう1年ここで働いてから行ってもいいんじゃないか、ってね」
教えたかったこと、気づかせたかったこと、今ごろになって、次々浮かんできてねぇ。
ひとりごとみたいな言い方だった。