マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
甲子園優勝投手・今井達也の現在地。
技術は揺れても“原点”はブレない。
posted2016/10/19 07:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Hideki Sugiyama
作新学院・今井達也投手の甲子園での快投、そして全国制覇には、たくさんの人が驚いたに違いない。
それほどに、この春や去年の今ごろのグラウンドで見た“今井達也”とは、まるで別人の躍進ぶりだった。
作新学院に快速球投手がいることは、2年生で迎えた夏の甲子園の時から聞いていた。しかし、その逸材が甲子園のベンチにはいなかった。
新チームの秋、栃木の県大会で見た今井達也は、ただ力任せに体を振って投げる、見るからにコントロールの悪そうな粗けずりな投手だった。
しかし、細身でもリリースポイントで全身の瞬発力がはっきりわかるパワフルな投球フォームと身体能力、何よりしなやかな腕の振りには、「次の春こそ……」と期待させる才能が満載されていた。
しかしその春も、背番号18を背負ったスリムなユニフォーム姿が、公式戦のマウンドで躍動することはなかった。
夏の甲子園で驚いた「どこが今井なんだ」。
そして、夏だ。
栃木県予選が始まった時点でも、まだ彼は“本物のエース”じゃなかった。しかし、5人の投手たちの継投で勝ち進む中で、およそ22イニングで33三振を奪って快投を続ける報道に、はっきりと変身を認識したものだった。
甲子園でひさしぶりに見て驚いた。
どこが“今井”なんだ……。
彼のフォームはそこまで変わっていた。いや、改善されていたと言わなければ、彼の努力と、そのために骨を折った指導者の方たちに失礼というものだろう。