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親子鷹GPライダーの目標へ着々。
佐々木歩夢16歳、圧倒的な成長曲線。 

text by

遠藤智

遠藤智Satoshi Endo

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photograph bySatoshi Endo

posted2016/10/09 07:00

親子鷹GPライダーの目標へ着々。佐々木歩夢16歳、圧倒的な成長曲線。<Number Web> photograph by Satoshi Endo

元GPライダーの父・慎也さん(左)と佐々木歩夢(右)。最終戦で優勝してチャンピオンを決めた。

速い選手ではなく、凄く速い選手が欲しいと言われた。

 とは言っても、グランプリの登竜門であるルーキーズでチャンピオンを獲得し、グランプリライダーが多数出場してくるCEVの1年目で、最終戦を残しランキング5位という成績は、世界の舞台でも十分に通用することを証明している。そのため、佐々木をサポートしているホンダは、来季の世界選手権参戦に向けて所属させるチームの選定に入り、グランプリ参戦が内定した。今年の10月に16歳になり、出場最低年齢に達した佐々木にとっては、来季の世界デビューは願ってもないことである。

 思えば、今年初めのインタビューで彼は、こう語っている。

「ホンダの監督さんに、速い選手はいらない、凄く速い選手が欲しいって言われた。だから、僕は凄く速い選手になります。'16年の目標はルーキーズカップとレプソル選手権(FIM・CEVレプソル国際選手権)でチャンピオンを獲って'17年にグランプリに参戦すること。将来の目標は、ロッシやマルケスのようにMotoGPでチャンピオンを取ること。マルケスは何歳でMotoGPのチャンピオンになったんでしたっけ? 20歳? だったら僕は19歳で獲ります」

「マルケスが20歳? だったら僕は19歳で獲ります」

 佐々木の目標はスケールが大きい。「マルケスが20歳? だったら僕は19歳で獲ります」なんて台詞はなかなか言えない。マルク・マルケスがMotoGPクラスにデビューした13年に、フレディ・スペンサーの史上最年少優勝記録を31年ぶり、チャンピオン獲得記録を30年ぶりに塗り替えたが、その記録をブレイクするのは容易なことではない。しかし、佐々木は、「デカイ口を叩くこともあるけど、それは自分にプレッシャーを掛けるという意味もあるんです」と言ってくれた。こんな言葉は、自信がなければいえないし、そんな佐々木の成長ぶりを見ているのは実に楽しい。

 元GPライダーでもある父・慎也さんは、世界チャンピオンになるという息子のために、中学生のときにインターナショナルスクールに通わせて英語の勉強を徹底的にさせた。高校に進学せずプロライダーになるという決断にも反対はしなかった。今年から生活のすべてが世界チャンピオンになるための時間になった。すでに、中学生のときからトレーナーの指導を受けて身体作りに励んでいる。いまは、なにもかもが家族の援助があって実現していることだが、その期待に応え続けようと、一戦一戦を全力で戦い、そして成長を遂げている。

【次ページ】 夢という言葉は使わず、すべて目標という言葉で語る。

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