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香川真司が居場所を確保する可能性。
ドルトムントの“新サイクル”考察。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2016/09/28 17:30
香川真司がクロップとともに欧州を席巻したドルトムントのサイクルは終わりを迎えた。次のフェーズに進む時が来たのだ。
主力が移籍したのは、ドルトムントでの限界が影響?
サイクルの終わりを象徴する出来事が、今シーズン開幕前にフンメルス、ギュンドガン、ムヒタリアンという主力の移籍だった。彼らがドルトムントを離れた理由は、国内外のビッグクラブからオファーがあったからという単純な理由だけではない。彼らは、ドルトムントで新たなモチベーションを見出すことに限界を感じていたのだ。
毎年のように補強を続けてきたのに、バイエルンにリーグ4連覇をゆるした。ドイツ杯では3年続けて、決勝で敗れた。優勝を狙っていたELでも、大会の歴史に残る逆転劇を演じたリバプールの引き立て役となって準々決勝で敗退した。
その背景に目をむけると、彼らが何を考えていたかが分かる。トゥヘル監督の下、昨シーズンの途中で攻撃的な戦いから相手に合わせた守備的な戦いへの変更を選手たちは受け入れた。これまでと異なる戦術に戸惑いながらも、そのなかで戦い続けてきたのは、結果を残したかったから、タイトルに飢えていたからでもあった。
しかし、ブンデスリーガのなかで最も長いシーズンを戦った彼らの手元に残ったのは、CL出場権だけだった。悔しい想いを味わってきて、昨シーズンも悲願は叶わなかった。そんな状況で新たなモチベーションを見出すのは難しい。それも、フンメルスたちが移籍する大きな理由だった。
つまり、トゥヘル体制で2年目を迎えたドルトムントは、2011年にクロップ監督のもとで9年ぶりのリーグ優勝を達成した時のサイクルが終わり、次のフェーズに突入しているのだ。
レアル戦には10代の選手が3人も出場していた。
2011年にリーグ優勝を果たしたチームの平均年齢は24.2歳。今季からドルトムントに新たに加入した8選手の平均年齢は、22.3歳(*レンタルからの復帰選手は除く)。レアル戦で出場した選手のなかには10代が3人、22歳以下の選手が6人もいた。香川真司も先日、こんな風に話している。
「やはり、18歳や19歳の選手たちの存在は、すごく勉強になります。彼らはポテンシャルがすごく高いし、プロフェッショナルな選手が多い。そういう選手がどうやっていくのか楽しみですし、刺激もありますから」
彼らの現時点での経験値や、これからの成長の余地を考えれば、CLの滑り出しは確かに上々。つまり、ドルトムントは“未来”を見ているのだ。成長の可能性が十分に残されているという事実が、彼らをポジティブにしているのだ。