「完全に間違いだった…」フェラーリ代表、マッティア・ビノットが謝罪し、角田裕毅が悔やんだ「ツナミ」発言騒動の全容

　フェラーリのチーム代表を務めるマッティア・ビノットが、イタリアGP2日目の国際自動車連盟（FIA）の公式会見で、自身が語った「ツナミ（津波）」発言を謝罪した。

　ビノットの発言は、その前のオランダGP後の記者会見で発せられたものだった。レース中にマシントラブルが生じ、スローダウンしながらコース脇にクルマを止めた角田裕毅（アルファタウリ）のことを、「ツナミ」と表現していたのだ。

「ツナミ」発言に対して、悔恨の思いを募らせていたのはビノットだけではなかった。ビノットに「ツナミ」と呼ばれた角田自身も、自分の行動に疑問を感じていた。じつはビノットが角田のことを「ツナミ」と呼んだのは、オランダGPの記者会見が初めてではなかったからだ。

「今シーズンが開幕した当初から、ときどき飛行機が一緒になることがあって、そんなとき彼は僕のことを『ツナミ』と呼んでいました。日本人としては『良くないな』と思っていて、いつかそれを指摘しようと思っていました。ただ、ヨーロッパでは「ツナミ・レーシング」というチームがポルシェを走らせているように、ツナミという言葉が持つ意味が日本人と違うところがあって、そこまで気にしないようにしていました。でも、ひとりの日本人としてはビノットの発言はとても悲しいことで、もっと早く自分がビノットに『その言葉を使うことは良くないことだよ』と言うべきでした」（角田）

　ビノットの言葉を、筆者も角田と同じ思いで聞いていた。じつはイタリアGPの公式会見で、ビノットに「ツナミ」発言に対する謝罪を求めたのは、筆者である。ただし、それは単にビノットの発言を正したかったからではない。

「ツナミ」発言の波紋

「ツナミ」という表現をビノットが使ったことに対する思いは人により異なる。天災は津波だけでなく、アメリカには竜巻（トルネード）の愛称で呼ばれた日本人メジャーリーガー・野茂英雄もいた。「日本人だけが津波に対する意識が過剰ではないか？」あるいは「これは一種の言葉狩りではないか？」という意見もある。

　しかし、過去に何度か津波の被害に遭った経験がある日本人にとって、津波という言葉は諸外国の人々とは違い、特別な意味を持つ。しかも私たちは、11年前にも東日本大震災を経験したばかり。その悲しみと心に負った傷は、いまも完全には癒えていない。

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