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絶妙の難易度、熱心で平等なファン。
鈴鹿はF1ドライバーにとって特別だ。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byAFLO
posted2016/09/25 08:00
昨年の日本GPで、数多のドラマを生んだ1コーナーに飛び込んでゆくドライバーたち。今年の開催は10月7日(金)~9日(日)だ。
「落とせそうで、なかなか落とせない女性のようだ」
また鈴鹿出場5回のうち4度入賞しているフォース・インディアのニコ・ヒュルケンベルグは「S字も難しいけど、130Rもなかなかチャレンジングだ」という。
攻め甲斐のあるコーナーが至る所にある。それがF1ドライバーたちのハートを虜にする。可夢偉はそのことを恋愛にたとえて、こう表現していたものである。「落とせそうで、なかなか落とせない女性のようだ」。その可夢偉がその恋愛を成就させたのが2012年だった。日本人として3人目の表彰台を、大好きな鈴鹿で達成した。
「夜遅くまでグランドスタンドに残って応援してくれる、あの熱心なファンが好きだ」(セルジオ・ペレス/フォース・インディア)
鈴鹿が多くのF1ドライバーたちに愛されているのは、決してコースレイアウトだけにあるわけではない。ドライバーたちが異口同音に発するのは、鈴鹿に集うファンの存在である。海外のファンが「熱狂的」と表現されるなら、鈴鹿のファンは「熱心」である。イベントが終了しても、メカニックたちの作業を夜遅くまでスタンドから見つめているファンが数千人もいる国は、ほかにはない。
かつてセナは「まるでブラジルのようだ」とも。
また地元のドライバーを応援することが多い海外のファンに比べて、鈴鹿ほど平等にドライバーを応援するサーキットはない。ブラジルの大英雄、アイルトン・セナがかつて鈴鹿を訪れたとき、たくさんのブラジル国旗が掲げられている光景を見て、「まるでブラジルのようだ」と感動していた。
その後輩であるフェリペ・マッサ(ウィリアムズ)も「そんな鈴鹿のファンに会うのが楽しみ」というドライバーのひとりだ。すでに今シーズン限りでF1からの引退を表明しているマッサ。F1ドライバーとして最後の鈴鹿は、特別な思いで迎えることだろう。
そして、そんな鈴鹿で年に一度の日本GPが開催される時を待つ、この瞬間が好きだ。今年は、どんなドラマが待っているのだろうか。