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広島から去り、戻ってきた2人の男。
黒田博樹と新井貴浩、涙の秘密。 

text by

鈴木忠平

鈴木忠平Tadahira Suzuki

PROFILE

photograph byKenji Miura

posted2016/09/23 07:00

広島から去り、戻ってきた2人の男。黒田博樹と新井貴浩、涙の秘密。<Number Web> photograph by Kenji Miura

新井より2歳年上の黒田は、普段でも兄弟のように仲がいい。他の特集記事では、ふたりを広島に入団させた伝説のスカウトマンの貴重な証言も。

ふたりの男が広島へ復帰し、殉じようとしている理由。

 誰かのために戦う。黒田と新井をつないでいる信念だ。特に昨年、ともに広島へ復帰してからは、野球人生をなげうつ覚悟が伝わってきた。「個」の追求こそが生き残る道であるはずの世界で、なぜ、そうするのか。今回、対談の中で2人に聞いた。すると、期せずして、まったく同じ答えが返ってきた。

「……だから」――。

 彼らを包んだのは広島だった。71年前の朝、人の痛みを知らない閃光によって焼き尽くされ、人類最大の痛みを知った街。

 彼らを育てたのはカープだった。何もなくなった荒野で、希望となった球団。

 彼らが戦ったのは市民球場だった。人類の罪を問う無慈悲な残骸の見える場所に建てられ、1杯200円のうどんが名物の小さな球場。

 生まれながらの勝者でなかった彼らはそこで、負けて、負けて、それでも立ち上がらせてもらった。それが奇跡のような物語の序章になった。

 傷ついた者は人の痛みを知っている。持たざる者は、本当に大切なものが何かを知っている。だから、彼らは広島カープに殉じたのだ。

 うれしいだけじゃない。苦しみも、痛みも込められた2人の涙が絶望から立ち上がった不屈の街と重なった。

Number911号の誌面で、優勝に至るまでのお互いの秘めた思いを存分に語り合って下さった黒田選手と新井選手。そのスペシャル対談記事「俺たちの広島カープを語ろう」は、広島ファンのみならず、すべての野球ファン必読の熱い記事となっております。永久保存版とも言えるこの一冊、是非ご一読下さい!
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