錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
なぜデ杯をダブルスで戦ったのか?
錦織圭「日本はまだ強くなると思う」
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byHiromasa Mano
posted2016/09/20 13:30
試合直後、みんな揃って自撮り写真!(左から、ダニエル、杉田、西岡、錦織) チーム全員の力で、日本はデ杯ワールドグループ残留を決めたのだ。
ダブルスは機会こそ少ないが、錦織は結構好きなはず。
錦織は他のトッププレーヤー同様、普段ツアーでほとんどダブルスをプレーしないが、苦手ではない。むしろ好いているくらいだということは、たまにプレーする機会を見るだけでもよくわかる。
カナダ戦に勝ったとき、相手ペアの1人は元ダブルス世界1位のベテラン、ダニエル・ネスターで、錦織のプレーは相手チーム監督や記者を「錦織があんなにダブルスも巧いとは知らなかった」と驚かせた。未だプロでのタイトルこそないが、昨年のブリスベンではドルゴポロフと組んで準優勝した。ジュニア時代には16歳のときに全仏オープンのダブルスで優勝している。
結局、そういう錦織をダブルスでも使わなければ勝ち目は薄いというのが現状だったのだとも言える。単複起用は負担が重く、シングルスで勝機を探るオーダーになれば、シングルスに漏れた選手がダブルスを担うというケースが多くなる。どうペアを組んだところで、即席か、そうではなくてもコンビ経験豊富といえるダブルスにはならなかった。杉田は「自分は監督の考えに従い、持ち場に全力を尽くすだけ」と言っていたが、口にはしない複雑な思いがあったはずだ。
負けられない。そして、注目の的になっての試合。
今回、錦織以外のメンバーのランキングはダニエル88位、西岡96位、そして杉田98位。実力的には誰がシングルスに選ばれてもおかしくはなかった中で、再びダブルスを任された杉田だが、〈2日目〉に臨む気持ちは過去のものとは違った。
即席は即席でも、パートナーは錦織。
負けられない。
そして、注目の的だ。
「錦織選手がダブルスをチョイスしてくれたということで、絶対ダブルスを取りにいくんだという思いを感じました。それに応えたいと思いましたし、そういう意味で気持ちが引き締まりました。尋常じゃなく緊張しましたけど、コートに入ってから爆発できたと思います」
絶対に取りに行くダブルスを、杉田はこれまで経験したことがほとんどなかったのかもしれない。
チームの課題だったダブルスにも光が当たり、ダニエルは「2人のすごいプレーが見られて、僕も将来ダブルスに出れたらなって思いますけど、僕だったら緊張してボレーとか入れられない(笑)」などと言って笑いを誘った。