錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
なぜデ杯をダブルスで戦ったのか?
錦織圭「日本はまだ強くなると思う」
posted2016/09/20 13:30
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Hiromasa Mano
先週末、デビスカップで日本がワールドグループ残留を決めた。
金曜日から大阪の靭テニスセンターで行なわれたウクライナとのプレーオフで、初日のシングルス2試合、2日目のダブルスと、日本は3連勝し、最終日を待たずに勝利。ウクライナのエースであるアレクサンドル・ドルゴポロフが怪我で来日しなかったことも背景にはあるが、それにしても世界ランキング50位のイリヤ・マルチェンコと、今は105位だが5年ほど前には30位台にいたベテランのセルゲイ・スタコフスキーを擁するチームに3連勝、失セットわずか1とは予想をはるかに上回る戦いぶりだった。
しかも、錦織圭をシングルに起用せずに、である。
錦織は1つ年上の杉田祐一と初めてペアを組んでダブルスのみに出場。ウクライナペアを6-3、6-0、6-3で粉砕し、「初めてにもかかわらず、いいダブルスができたのは新しい発見で、これからのチームとしての可能性が見えた」と話した。
'08年にデ杯デビューした錦織が、参戦したにもかかわらずダブルスしかプレーしなかったことは過去にない。これは、全米オープンで準決勝まで勝ち進んだ錦織の疲労を考慮した作戦とのことだったが、それが、錦織の体力をいざという最終日に備えて温存するという目的を越えた効果を生んだ。
錦織の背中を見て、若い選手たちが成長している!
錦織が言った「チームの可能性」の中には、初日にシングルスで勝利を挙げた23歳のダニエル太郎と21歳の西岡良仁、若い2人の成長も含まれている。
「今回は錦織さんに頼らなくても、僕たちで勝てるチャンスがある」と自分を奮い立たせたダニエル。
「錦織さんは全米であんなに活躍して、どう考えても疲れている。少しでも休ませてあげたかった」と先輩をいたわった西岡。
若い2人の責任感・使命感に満ちた言葉が印象的だった。
錦織は若手を叱咤激励してグイグイ引っ張っていくタイプでは決してないだろう。しかし、こんなふうにも人は引っ張り上げられ、力を引き出されるものなのだ。