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1台の自転車を2人でこいで銀メダル。
鹿沼由理恵と田中まいは本当のペア。
posted2016/09/16 11:50
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
執念で、試練を乗り越えてつかんだメダルだった。
9月14日、自転車の女子タンデム個人ロードタイムトライアルが行われ、鹿沼由理恵が銀メダルを獲得した。
この種目は、ロードで30kmのタイムによって競う。視覚障害のある選手が後ろに乗り、前に乗ってハンドル操作などを担う「パイロット」は健常者が務める。
鹿沼とペアを組むのは、競輪選手の田中まい。実はあらゆる局面を経て、メダルを手にした。
自転車で女子初の代表選手となった鹿沼はもともと冬季競技の選手で、2010年のバンクーバーパラリンピックのクロスカントリーに出場し、7位入賞を果たしている。その後、左肩を故障。ソチパラリンピック出場をあきらめ、自転車に転向した。
必要なのはパイロットを務めてくれる選手だった。自転車競技はトラック、ロードがあり、どちらも視野に入れていた。双方で走れる選手を探していたとき、たどりついたのが、田中だった。田中は鹿沼のオファーを承諾し、2人のペアはスタートした。
2013年から大会に出場すると、2014年のロード世界選手権タイムトライアルで優勝するなど、すぐさま結果を残す。ロードにとどまらずトラックでも好成績をあげ、注目度は順調に右肩上がりだった。
今年の5月からは、競輪を休業して専念。
順調に歩んでいるように見えた2人だったが、昨年コンビを解消していた時期があった。田中は競輪も継続しており、掛け持ちの難しさがあったからだ。
それでも昨秋、鹿沼が再度オファーを出すと田中はこれに応え、再び2人は同じ自転車に乗りはじめる。今年の5月からは田中が競輪を休業し、パラリンピックを目指して専念することを決めた。その裏には、リオへの決意があった。
両者の関係にも徐々に変化が生まれた。以前は互いに気をつかいすぎて要求を躊躇することもあったが、遠慮していても意味がないと、互いに意見を交換するようになった。その時、本当の意味で彼女たちはペアになったと言えるかもしれない。