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1台の自転車を2人でこいで銀メダル。
鹿沼由理恵と田中まいは本当のペア。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2016/09/16 11:50
レース後に笑顔を見せた田中まい(左)と鹿沼由理恵のペア。前半を田中が、後半を鹿沼が引っ張る戦略も成功した。
メダルを狙った3000mでは予選敗退に終わったが……。
こうして迎えたのが、リオだった。
最初の種目、女子タンデム1000mタイムトライアルでは5位入賞を果たし、手ごたえをつかむ。
続いて出場したのは女子タンデム3000m個人追い抜き。2人にとっては、メダルを狙っていた種目だったが、予選敗退と思わぬ結果に終わる。鹿沼は涙をこらえ、田中も無念さを隠せなかった。
逃したメダルをつかみとるべく挑んだのが、女子タンデム個人ロードタイムトライアルだった。
2人でこいでも、自転車のチェーンは1本。
だが、レースを前に思わぬトラブルが起こった。スタートのまさに直前、ギアが変調をきたし、いちばん重いギアのまま変えられなくなったのである。
重いギアのまま、カーブなどの切り替えもできない状態での30kmが、ハードな道のりになるのは分かっていた。
それでも、2人は懸命にペダルを踏み続けた。タイムは39分32秒92。3位のドイツを0.89秒のわずかな差で振り切り、2位でゴールした。
「メダルを獲りたいという気持ちは、痛いほど分かっていました」(田中)
「田中さんと、一緒に表彰台にあがりたいと思っていました」(鹿沼)
レース後、涙とともに抱き合う。鹿沼の肩を、田中がぽんぽんと叩く。
その後笑顔で撮影に応じ、国旗を背に笑顔を見せた。
2人でこいでいても、自転車のチェーンは1本。2人の呼吸が合わなければ推進力は大きくならない。
出会ってから、紆余曲折を経てたどり着いた大舞台でつかんだ銀メダルは、執念とともに、呼吸をぴたりと合わせてつかんだメダルだった。