松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
ゴルフはいつだってギャップだらけ。
松山英樹のスコアと満足感の差。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph bySonoko Funakoshi
posted2016/09/14 17:00
背後には「ULTIMATE(究極)」の看板。松山英樹の求めるゴルフに言葉をつけるとしたら、そんな言葉になるのだろうか。
国籍とアイデンティティの狭間で揺れた選手も。
ショットやパットではなく、国籍や立場、目指すもの、そのギャップで苦悩していた選手もいる。BMW選手権の最終日、松山と同組で回ったラッセル・ノックスは米国の大学を卒業し、米国に住み、米ツアーを主戦場としてきたスコットランド人。欧州のためにライダーカップに出場したいと願っていたが、欧州ツアーのメンバー登録をしたのは初優勝を飾った今季のHSBC選手権の後。それから稼いだポイントだけでは自力でのチーム入りは叶わず、今季2勝を挙げて世界ランキング19位へ上昇した絶好調の選手でありながら、欧州とは馴染みが薄いと見なされ、キャプテン推薦も受けられなかった。
理想と現実。意欲と現実。やり場のない、やるせなさ。そのギャップを埋めてくれたのは、陽気で豪快なコロンビア人の妻アンドリアだった。
「だってHSBC選手権で優勝するまでは、ライダーカップなんて夢のまた夢で想像すらしたこともなかったんだから、それから欧州メンバー登録したのが遅いとかってことより、ライダーカップの人選に“かすった”ことが、ラッセルにも私にも驚きって言うぐらいの話なのよ。それに、キャプテン推薦で選ばれなかったことがニュースになったことで、ラッセルは今までより有名になったし、応援してくれるファンも増えた。だからクヨクヨするな、気持ちを切り替えなさいって、私、ラッセルに言ったのよ」
妻に一喝されたノックスは、すぐさま携帯の待ち受け画面をライダーカップの写真からフェデックスカップの写真に変え、「ゴール・チェンジ!」と言って笑ったそうだ。
今のところ、松山の拠り所は練習あるのみ。
いろんなギャップと戦っている松山の迷走を、いつか解決できるものは果たして何だろう。もしかしたら、マキロイのようにコーチを付けることかもしれない。ジョンソンのようにギアチェンジが悩みを一掃してくれるかもしれないし、ノックスのようにストレートに核心をついて叱咤激励する女房、あるいは女房役が大きな役割を果たすのかもしれない。
今のところ、松山自身の拠り所は、練習あるのみ。
「今週、いいものが見つかりそうな感じだったんで、それをしっかり作っていくのが大事」
「しっかり練習して、次に向けて備えたい」