錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
挑戦者の立場に徹した錦織圭は、強い!
マレーとの対戦が絶対面白くなる理由。
posted2016/09/07 15:30
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Hiromasa Mano
シーズン最後のグランドスラム、全米オープンで錦織圭が勝ち進んでいる。
グランドスラムの準々決勝進出は今年の全豪オープン以来だ。全仏オープンとウィンブルドンは4回戦で敗れたが、1シーズンのグランドスラム全大会で4回戦以上に進んだのは今年が初めて。これは、トッププレーヤーですらそう容易なことではない。今年は特に、ロジャー・フェデラーやラファエル・ナダルの欠場に、ノバク・ジョコビッチのウィンブルドンでの3回戦負けなどの〈事件〉が起こったせいで、安定した好成績を挙げる常連組が減った。結果、錦織以外では実にアンディ・マレーしかいないのだ。
その2人が準々決勝でぶつかる。
その勝者が準決勝で対戦するのは、'09年の全米チャンピオンで鮮烈な復活劇を見せているファンマルティン・デルポトロか、全豪オープンと全仏オープンのタイトルを有するスタン・ワウリンカ。
ドローの逆の山からすでにベスト4に名乗りをあげているのは最強王者ジョコビッチと、ツアー屈指のエンターテイナーのガエル・モンフィス。
この現時点での勝ち残りは、フェデラーが欠場して大きな穴が空いた大会において、期待できる最高レベルのスリリングな顔ぶれといっていいかもしれない。
「ケイ、あなたは今日歴史的な勝利をあげました!」
強烈な個性たちの中で光るアジアの星が、第21シードのイボ・カルロビッチを破った4回戦のあと、オンコート・インタビューに現れた。インタビュアーである女子テニスの元トップ3、パム・シュライバーは、少々オーバーな口調でこう切り出した。
「ケイ、あなたは今日歴史的な勝利をあげました!」
勝負の舞台であった“ルイ・アームストロング”と名付けられる準センターコートは、これから開閉式屋根を築く改修工事に入るため、今の状態で存在するのはその日が最後だったのだ。
'97年に現在のセンターコートである“アーサー・アッシュ・スタジアム”が完成する前までは、それがセンターコートだった。そんな歴史的なスタジアムのシングルス最後の試合の勝者が錦織になったというわけだ。