プロ野球亭日乗BACK NUMBER
“監督やGMのようなもの”で自滅。
中日ベンチ内で、一体何があった?
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2016/08/22 16:30
「選手には『悔いのないプロ野球選手生活を送ってほしい』と言いました。『今の自分のように悔いのないように』と」と記者会見で語った谷繁監督。
谷繁監督と落合GMが衝突した、ある人事問題。
ドラフト、トレードやフリーエージェントなどを含めた戦力の補強でも、一切の希望が入れられずに、落合GMの意向が全面的に反映された。一、二軍の選手の入れ替えさえも、監督時代の腹心である森繁和ヘッドコーチを通じてGMが掌握していた。
自然と広がる溝の中で、谷繁監督と落合GMが決定的に衝突したのが、様々なメディアで報じられている昨オフの佐伯貴弘守備コーチを巡るコーチ人事だった。
当時の二軍監督から一軍打撃コーチへの配転を希望した監督案を、肝いりで獲得した加藤秀司打撃コーチとの兼ね合いで落合GMが却下。谷繁監督が白井オーナーに直訴して、最終的には守備コーチで一軍昇格という折衷案で落ち着いたが、その時点で両者の関係は後戻りのできないところまで悪化したという。
監督だけが責を問われる、ということで良いのか?
メジャーでは簡単に言えば、球団経営をするのがオーナー(親会社)でそのオーナーから予算を渡されてチームの編成と運営を行うのがGMとなる。監督の仕事はGMから与えられた戦力を切り盛りしてグラウンドでの勝利を目指すことになる。
メジャーのコーチ人事を例にとれば、監督が連れてこられるのは話し相手のベンチコーチ1人ぐらいで、他のコーチ人事はGMが決める。また選手の入れ替えもGMの専権事項である。
そういう意味では落合GMは職務に沿って、仕事をしただけと言えるわけだ。
ただ、一方でGMと監督という職務を考えたときに、果たして谷繁監督だけがその責を問われるものなのかという疑問も、どうしても拭いされない部分として残るのだ。
解任の最大の理由は成績不振である。
休養時点で、チームは8カード連続負け越しで最下位に転落していた。チーム打率でリーグ5位、防御率は4位と、戦力的にも上位を狙える数字ではなかった。5月31日にはドラフト1位ルーキーの小笠原慎之介投手を一軍に上げて先発起用するなどしたが、はっきり言ってチームのムードを変える力はまだなかった。序盤にチームを引っ張ったビシエドの調子が落ちると、打線の軸となる選手が全く見当たらなくなり、オーダー編成にも苦労するようになった。