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開幕10日前に功労者の監督を解任!?
ビジャレアルで、一体何が起きたか。
posted2016/08/20 08:00
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph by
AFLO
リーガ開幕を10日後に控えた8月10日、とんでもないニュースが飛び込んできた。
セビージャと共に3強を追う今季期待のチームであるビジャレアルが監督マルセリーノ・トラルを解任。
クラブのウェブサイトで発表されたが、なぜかは一切説明されていない。
スペインのサッカージャーナリストも当初はわけがわからず、公式サイトが不正侵入に遭ったという噂さえ流れた。なにせ昨年11月、ビジャレアルはマルセリーノとの監督契約を'19年6月末まで延長している。その際マルセリーノは「ビジャレアルより良いクラブはそうそうない」と口にしている。両者は、つまり相思相愛だったのだ。その後ビジャレアルは4位でシーズンを終えたのだから、クラブが一方的に心変わりしたとはとても思えない。
また、その4位のおかげで挑戦権を得たCLプレーオフは1週間後に迫っている。
加えて、ビジャレアルは個人的な利益や好き嫌い、気まぐれでチームに首を突っ込む会長/オーナーが権勢を振るうクラブではない。仕切っているのは、金は出すけど口は出さないフェルナンド・ロイグ。このタイミングで明白な理由のない監督交代はあり得ない。
しかし数時間の後、クラブがどうしてこんな決断を下したのか判明した。
ミラン移籍を望んだ重鎮とロッカールームで衝突。
ひらたく言えばマルセリーノの性格のせい。“元”監督の周りの者が溜め込んだ不満を爆発させてしまったため、こんな時にこんなことになってしまったのだ。
起爆剤となったのは9日、ラ・コルーニャで行われたデポルティーボ主催テレサ・エレーラ杯でのマルセリーノとムサッキオの言い争いだった。
チーム関係者しか入れないロッカールーム内でのことだけに、正確にいつ起こったのかはわからない。情報のソースによってキックオフ前やらハーフタイム中やら試合後やら様々だ。しかし肝心な点は一致している。
この日ムサッキオはキャプテンマークを巻いてピッチに立つことになっていた。ところがチームの重鎮でありながらミランへの移籍を望んだ件を腹に据えかねていたマルセリーノがそれを認めなかったため、ムサッキオが立腹。さらに、これを見たチームメイトがムサッキオに加勢してマルセリーノの態度をなじったためマルセリーノも収まらず、監督をとるのか選手をとるのか、クラブが二者択一を迫られる事態になったというのだ。