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開幕10日前に功労者の監督を解任!?
ビジャレアルで、一体何が起きたか。 

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横井伸幸

横井伸幸Nobuyuki Yokoi

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posted2016/08/20 08:00

開幕10日前に功労者の監督を解任!?ビジャレアルで、一体何が起きたか。<Number Web> photograph by AFLO

自身もスペインの年代別代表に名前を連ねるなど、名選手だったマルセリーノ・トラル。監督としての能力は確かなものだ。

選手との衝突は、実は過去にも……。

 ラジオ局カデナ・コペによると、マルセリーノには自分が決めたルールに極めて厳格なところがあり、そのせいでこれまで何度も選手と対立してきたという。

 たとえばカニのケースだ。

 '14-'15シーズン中のある日、肥満度を表すBMI(ボディマス指数)の計測をチームで行ったところ、ジオバニ・ドスサントスの値がリミットを越えてしまった。腹を立てたマルセリーノはジオバニを「でぶ」呼ばわり。見かねた当時のキャプテン、カニが間に入りジオバニを擁護すると、マルセリーノの怒りはさらに激しくなり、攻撃のキーマンであったにもかかわらず、2人はビジャレアルを去ることになってしまった。特にカニの移籍発表は今回同様、突然かつ理由が不明だったため、ファンもメディア関係者も首を傾げたものだ。

会長は、今度は選手の側に立って監督を解任。

 話を戻して、ラ・コルーニャでの出来事を報告されたロイグ会長は、役員会を開き対応を協議した。結論はマルセリーノの解任だった。カニの一件のときは監督側に立ったロイグだが、度重なる衝突にうんざりしていたに違いない。また「欲しい選手を獲らず、頼んでもいない選手を獲ってくる」と補強に関して文句をいわれたり、プレシーズンマッチの組み方にケチをつけられた役員がやはりマルセリーノに対して不満を抱いていたことも影響したようだ。

 前述のとおり5年ぶりのCL本戦出場をかけた大事な試合は迫っているけれど、選手を罰して自分たちが我慢するより、いま思い切った行動をとった方が長期的にはクラブのためになると判断したのだろう。

 こうして3年半続いたビジャレアルのマルセリーノ体制は幕を下ろした。'13年1月にまだ2部にいたチームを引き受けそのまま1部に導き、翌シーズンはいきなり6位。'14-'15シーズンも6位。そして昨季は4位。植えつけたサッカーを含め、深く大きな足跡をクラブに残したといえる。マルセリーノ自身のキャリアにとっても最大の偉勲だ。

【次ページ】 公表した手紙には、クラブへの感謝が綴られていた。

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