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実は3001本目を大切にしていた……。
イチロー夫妻、偉業の舞台裏で。
 

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笹田幸嗣

笹田幸嗣Koji Sasada

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photograph byNaoya Sanuki

posted2016/08/16 12:00

実は3001本目を大切にしていた……。イチロー夫妻、偉業の舞台裏で。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

偉業の直後、「嬉しかったらそれなりの感情を、悔しかったら悔しい感情を、少しだけ見せられるようになったらいいな……と思っています」とコメントした。

弓子夫人への感謝の念に、照れていたイチロー。

 3000安打達成時には、

「(最初に感謝するのは)このきっかけを作ってくれた仰木(彬)監督ですかね。神戸で2000年の秋に、お酒の力を使って(メジャー挑戦を)僕が口説いたんですけど、その仰木さんの決断がなければ、何も始まらなかった」

 登録名「イチロー」を生み出し、'05年に他界したオリックス時代の指揮官に感謝の言葉を向けた。

 そのイチローが3000安打達成の翌日、一夜明けの記者会見で三たび、感謝の気持ちを表した。

 今度は弓子夫人だった。

「昨日も記者会見場に彼女がいたんですけど、『誰に最初に(感謝の気持ちを)伝えたいか』と聞かれたときに頭に浮かんだんですよ。でも、そこにいたので、そうは言えなかった。僕もそういうの苦手ですからね」

 はにかみながら言葉を選ぶイチローの表情が印象的だった。

しばらくは弓子夫人を球場で見ることはなかったが……。

 メジャー約140年の歴史の中で3000安打達成はわずかに30人しかいない。しかも、シーズン16年目での到達はあのピート・ローズと並び史上最速タイである。イチロー自身も今季中の達成を見据えた大きな目標であったし、リオ五輪の真っ只中でありながら日本中がイチローの偉業に感動することとなった。

 だが、イチローにはその3000安打同様に大切にする1本があった。3001安打である。そのヒントも弓子夫人にあった。

 2012年にヤンキース移籍後、球場を訪れる弓子夫人の姿を見かけることはなかった。

 その彼女が3000安打に残り2本に迫った7月28日の本拠地の試合を観戦に訪れた。3000安打を意識してのものであることは言うまでもない。王手をかけて挑んだ8月7日のデンバーでの試合も同じだった。

 マイアミの自宅を早朝に出発し、空路4時間強。デーゲームで行われたデンバーでの偉業を見守った。

【次ページ】 実は3001本目を大事にしていた、イチローと弓子夫人。

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