リオ五輪PRESSBACK NUMBER
世界記録まで0.54に迫った金藤理絵。
伊藤華英「競泳は生き様が現れる」
posted2016/08/10 07:30
text by
伊藤華英Hanae Ito
photograph by
AFLO
あと0.54。
4月のリオデジャネイロオリンピック選考会でたたき出した、2分19秒65。現在の200m女子平泳ぎ世界記録の2分19秒11まで、0.54秒だった。
しかし観戦した人の感覚としては、世界記録まで後少しという言葉よりも、何と素晴らしいレースだったのかという印象が残ったことだろう。
心からの笑顔で、レース後プールサイドに上がってくる金藤理絵を見たのは久しぶりだった。
3位に終わった100m平泳ぎのあとも、周囲は「悔しいレースだったのでは」と思っていたが、理絵本人のインタビューはいつでも前向きだった。
五輪に出たかどうかで、4年間の意味が変わる。
「100mであそこまで頑張れたから、200mも良かった」
「オリンピックでは、世界記録を目指して頑張る。18秒台を出す」
彼女のインタビューを聞いていて、「競泳のレースは生き様が現れる」という言葉を思い出した。
紆余曲折という言葉がそのまま当てはまるくらい、2008年の北京オリンピック出場、そしてロンドンオリンピック落選を経験したこの8年間は波乱に満ちた時間だった。
オリンピックを目指すアスリートにとって、本人のモチベーションによって4年間という時間の流れは違うものだ。彼女の場合は、2008年から2012年はオリンピック選手としての4年間だった。しかし、2012年から2016年の4年間は、何者でもない状態での時間だった。苦しく長い時間だったに違いない。
周囲からも「やるのか、やめるのか」と問われたに違いないし、本人の心中も穏やかではないはずだ。「このままでは終われない」、「やめようかな」こんな気持ちが行き交っていただろう。