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単独無寄港世界一周ヨットレースへ!
白石康次郎、夢の実現まであと3カ月。
text by
矢部洋一Yoichi Yabe
photograph byYoichi Yabe
posted2016/08/02 11:00
「ヴァンデ・グローブ」に向けて準備を進める白石康次郎と、新たな船〈スピリット・オブ・ユーコー〉。単独無寄港での世界一周を託す船の全長は、わずか18メートルである。
いきなりの大西洋横断レースで7位に食い込む。
それは今年3月のことだった。
レースのスタートまでに白石に与えられた準備期間は8カ月にも満たない。その間に、まずレースを戦えるだけの良い中古の船を購入し、サポートチームを組み、船を整備して、5月末に行われる大西洋横断レースに出場、完走をする必要があった。完走は、ヴァンデ・グローブの参加資格の最低条件だったのである。
白石が「これなら」と思える船が決まったのは、4月始めだった。大西洋横断レースのスタートまで、残り1カ月ほどしか準備期間はなかった。
船の購入地であるフランスにあって大急ぎで整備をし、スタート地である米国ニューヨークまでその船を自分で回航。取って返す勢いで再び大西洋をもう一度逆向きに渡るレースを単独で行い……という、この行程だけでも並大抵の忙しさ、困難さではないだろう。
しかし、彼は人にも船にも恵まれた。
白石が雇ったフランス人を中心とするサポートスタッフたちはよく働いてくれたし、9年前に進水して何度も世界を巡った経歴を持つ船は、年代物ながら十分に堅牢で性能も良い艇だったのだ。
この資格取得のための大西洋横断レースで、白石は完走どころか、参加14艇中7位に入る上々の結果を叩きだす。
この想定外ともいえる素晴らしい成績には、前回のレースから10年という白石のブランクに不安を持っていた大会主催者や、ライバル艇の選手たちも驚き、白石への信頼度と注目度は一躍高いものとなった。
たった1人で地球を相手にするスポーツは他にない。
ヴァンデ・グローブの魅力は何か、白石は次のように語る。
「人類最小単位のたった1人で地球を相手にする……そんなスポーツは他にないですから。
しかも競技時間は、約2000時間です。普通スポーツって2時間くらいですよね。さらに距離は地球一周だから、これ以上長い距離を戦う競技もほかにない。これほどチャレンジングなスポーツはありませんから。
地球を相手にするというところが大好きです」