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「穴を埋める」ではなく、自分の色を。
主力不在の鹿島と浦和で輝く選手達。
posted2016/07/25 11:30
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph by
Miki Sano
穴を埋める。という言葉が、嫌いだ。
サッカーの世界では、主力選手が移籍したり、ケガをしたり、代表に招集されて、新たな選手が抜擢されるときに、この言葉がよく使われる。チーム力のマイナスをどれだけ抑えられるか、というニュアンスで。
でも、それではあまりにも志が低いんじゃないの? と、感じてしまう。たとえ普段、出場機会に恵まれていない選手でも、彼らはれっきとした「プロ」だ。主力選手がいないのは、むしろチャンス。代役として「穴を埋める」のではなく、「穴に居座って、コンクリートでガチガチに固めてやる」くらいの気持ちでいるべきなんじゃないの、と。
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例えば鹿島アントラーズの中村充孝の考え方は、こうだ。今季の彼は、ファーストステージ開幕からカイオと左サイドハーフのレギュラーを争ってきた。ところが7月初旬、カイオのアルアイン(UAE)移籍が決まった。
「俺も、穴を埋めるって表現は好きじゃないですね。もちろんカイオは素晴らしい選手です。俺よりもカイオのほうが良いと思う人はいるだろうし、どちらを試合に使うかは、監督が決めること。ただ、俺自身は『カイオにも負けていない。俺のほうが勝っている』と思いながら常に準備してきたし、試合に使ってもらえるようになってからは、それを証明することに集中していた」
セカンドステージ開幕から先発出場を続ける彼は、第2節サンフレッチェ広島戦から3試合連続ゴールを記録。カイオのいなくなった左サイドを、見事に自分の居場所にした。
“穴だらけ”になるはずだった鹿島対浦和。
主力不在のポジションを「穴」と表現するならば、7月23日のセカンドステージ第5節、鹿島対浦和レッズは“穴だらけ”の試合だった。どちらのチームも、主力選手がリオ五輪代表チームに招集されたからだ。鹿島からはDF植田直通とGK櫛引政敏が、浦和からはFW興梠慎三とDF遠藤航がブラジルへと旅立った。
彼らがいないことが「穴」となるのか、むしろチームの総合力を上げるための「チャンス」とするのか。これが、鹿島と浦和の「伝統の一戦」を観る上での重要なポイントだった。