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「穴を埋める」ではなく、自分の色を。
主力不在の鹿島と浦和で輝く選手達。
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph byMiki Sano
posted2016/07/25 11:30
2013年から3年連続で二桁得点の興梠慎三はまぎれもなく浦和のエースである。しかし、だからといって李忠成もFWとして敗北を認めたわけではない。
前半、鹿島のファン・ソッコがズラタンを抑える。
前半、五輪組不在の影響を全く感じさせなかったのは、鹿島だ。
「前半の守備に関しては、非常に良かったと思います。自分たちからプレッシャーに行く形で、レッズさんがいつもの状態じゃないと感じていたので。プレッシャーの掛け方は非常に良かったんじゃないかと思います」
石井正忠監督が語ったとおり、浦和のビルドアップに対して高い位置から激しくプレッシャーをかけ、パスワークを寸断する。興梠のいない浦和の1トップに入ったズラタンへの縦パスに対しては、植田に代わって出場したファン・ソッコが厳しく体を寄せてポストプレーを許さない。この力強さは植田に負けず劣らず。左右両足からの正確なビルドアップでも貢献した。
後半に入っても鹿島の勢いは止まらず。60分には山本脩斗のクロスを土居聖真が右足で合わせて先制に成功した。
李忠成「慎三とは違う形でそれ以上のプレーをしたい」
ところが、ここから状況は一変する。流れを変えたのは、後半開始から浦和の1トップに入っていた李忠成だ。
62分、右サイドのスペースに走り込んだ柏木陽介のクロスに対して、ファン・ソッコのマークを外した李が右足で合わせて同点に持ち込むと、73分にはカウンターから武藤雄樹のシュートをGK曽ヶ端準がキャッチミスしたところを見逃さず、素早く押し込んでゲームをひっくり返した。
「今季はコンディションも良かったので、1トップをやってみたいと思っていた。慎三がいなくなって、代役としてではなく、慎三とは違う形でそれ以上のプレーをしたい」
李ともう1人、興梠と遠藤のいない浦和に、プラスアルファをもたらしたのが57分からボランチに入った青木拓矢だ。彼は前半から圧倒されていたセカンドボール争いで孤軍奮闘し、73分のゴールシーンでは、自陣深くからうまく小笠原満男の前に体を入れてボールを運び、武藤へ正確なパスを通している。
「ベンチから見ていても、鹿島の選手はすべてにおいて出足が速くて、セカンドボールを拾って2次攻撃、3次攻撃につなげてくる。そこで自分が出たときは、セカンドボールを取ることを意識していた。最近はコンディションも良くて、ようやく自分らしいプレーが出せるようになってきた。それも、天野賢一コーチが居残り練習に付き合ってくれて、良いトレーニングメニューを組んでくれたおかげです。今、僕が意識しているのは続けること。五輪組がいないことは、考えていない。試合に使われる、使われないじゃなくて、とにかく続けることを考えています」