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CLに出る4人目の日本人になれるか。
瀬戸貴幸がルーマニアから狙う物。
text by
朴鐘泰Park Jong Tae
photograph byShigeki Yamamoto
posted2016/07/23 11:00
愛知県名古屋市出身、熱田高校を卒業後はブラジル留学、日本の地域リーグからルーマニアへ移り、いまやトップフットボーラーの1人だ。
CLに出場したお金で、瀬戸のレンタル料が払われる!?
――戻ってきたら、アストラは首位のチームに。勢いは感じた?
「チームの一体感、団結力が以前よりよくなってました。特に、スイッチ入った時のみんなの集中ぶりはすごかったですね。でも普段はみんなリラックスしてましたよ。ある意味、気が抜けすぎなんじゃないか? と思うくらい。僕たち練習前によくクラブハウスのロッカールームでサッカーテニスやるんです。ネット張って2対2のサッカーテニスやると、みんな夢中になって、監督が来ても気付かないくらい(笑)」
――トルコに移籍して、でも上手くいかなくてルーマニアに戻って、外国人最多出場記録もつくって、リーグ優勝も達成。2015-16シーズンはいろいろありました。
「山あり谷ありでしたね。でも個人的には、1点も取れなかったのが納得いってないですね」
――渡欧1年目の2007-08シーズンから無得点は一度もなかった。
「1試合に1回はゴールを決められそうな、決めなきゃいけないシーンがあるんですけど、昨シーズンは決め切れなかった。そこは反省ですね」
――新シーズンは、瀬戸選手の夢でもあるチャンピオンズリーグの予選がある。ところで、オスマンからのレンタルは「昨シーズンいっぱいまで」だったと思いますが。
「最初は、チャンピオンズリーグの予選がある8月の終わりまで延長、という話だったんです。実は僕、オスマンからアストラに無料のレンタル移籍というかたちになってて。ただ、オスマンは9月以降もレンタルが続くなら、ちゃんとレンタル料を払ってくれ、と。アストラも、チャンピオンズリーグの本戦に出場することになれば、UEFAから結構なお金が入るからレンタル料も支払える、という見積もりで」
――ということは、チャンピオンズリーグの予選の結果次第で、トルコに戻る可能性もある?
「それがですね……。昨日、オスマンから資料が届いて確認してみたら、『1年間の無料レンタル』って書いてあって。8月まで云々の話はいったい何だったんだ!? っていう。僕もビックリです(笑)。トルコに戻って挑戦する気持ちはもちろんあります。だけど、トルコは最近テロが頻繁に起きるし、アンカラではクーデターもあった。家族が不安を抱えて暮らしていくよりは、慣れ親しんだルーマニアにいるほうがいいのかな、と」
――アストラの人間がオスマンと交渉して、契約を1年間の無料レンタルにした、ということ?
「いや、誰も交渉していないそうです(笑)。まあ、こういうゴタゴタにはもう慣れました。これで1年間、腰を据えてルーマニアでプレーできることになって、より目の前の試合に集中できます。チャンピオンズリーグの本戦に出場できたら、より多くの人が僕のプレーを見てくれるだろうし、もうひとつの夢である、日本代表としてプレーすることにも、また一歩近づけるかもしれない。だから、アストラにとっても、僕にとっても予選はすごく大事なんです」