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ハミルトンの狂暴なコメントの陰に、
アイルトン・セナの言葉を感じた日。
posted2016/07/18 07:00
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Masahiro Owari
<もし、あなたがレーシングドライバーになりたいと思ったら、あらゆるリスクを受け入れ、限界まで攻め続けなければならない。もし、リスクを恐れ、前車とのギャップを詰めることを少しでもためらったら、もはやあなたはレーシングドライバーではない。この世界から出て行ったほうがいいだろう。>
7月3日に行われた第9戦オーストリアGPは、ファイナルラップで優勝を争っていたメルセデスAMGのチームメート同士が接触。ハミルトンが逆転優勝を飾り、トップに立っていたロズベルグは接触によってマシンにダメージを負い、3位に終わった。
近年、稀に見る手に汗握る熱戦だったが、レース後の表彰式では優勝したハミルトンにスタンドからブーイングが沸き起こった。ただし、これはオーストリアがロズベルグの母国であるドイツの隣国であるため、大勢のドイツ人がサーキットを訪れていたせいでもある。
個人では良いが、チームとしては検討するしかない。
ハミルトンは、そのブーイングに過剰な反応は見せなかった。
「もちろん、気持ちがいいものではない。特に、僕はこのサーキットが好きだからね。僕が訪れたことのある中でもっとも美しい場所のひとつだ。今週末、僕は持ってきたバイクで渓谷をツーリングしたくらいこの国にある種の思いを持っている。だから、勝ったときの反応は素晴らしいものではなかったけど、僕は彼らを責めたりはしない。時にはこんなこともある。ただ僕は何も悪いことはしていない。僕は優勝を目指してレースに勝った。フェアに正々堂々とね」
しかしながら、2人のドライバーが所属するメルセデスAMGにとっては冷や汗ものだったのか、レース後に緊急会議を開くことになった。
メルセデスAMGの事実上のチーム代表であるトト・ウォルフはレース直後、チームメート同士が接触したことを、次のように懸念していた。
「チームとしては、二度と事故を起こさないよう考えられる選択肢をすべて検討するしかない。そこに聖域はない。チームオーダーについても話し合われるだろう」