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広島追撃、そしてCS初出場へ――。
DeNA梶谷隆幸の打棒に火はつくか。
posted2016/07/13 07:30
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph by
NIKKAN SPORTS
7月10日の巨人戦終了後、梶谷隆幸は言った。
「状態は……上がってきましたね」
筒香嘉智とともにDeNAの中軸を打つ27歳の口からポジティブな言葉を聞いたのは、ずいぶん久しぶりのことのように思えた。
キャンプで左脇腹を痛めて出遅れた今シーズン、梶谷は復帰早々、主役に躍り出た。初出場を果たした5月4日に先制タイムリーを含む2安打を放ち、翌5日には初回、いきなりホームスチールに成功。積極性が持ち味の梶谷の合流は、不調だったチームのカンフル剤となった。DeNAは梶谷の戦線復帰から交流戦に入るまでの21試合を15勝5敗1分と大きく勝ち越し、猛スピードで借金を一度は完済した。
サヨナラ好機も“オレに回るな”と思うほどの不調。
しかし、チームに火をつけるだけつけた後、梶谷自身は燻っていた。
「ネクストにいる時から、もう決めてくれと思っていた。普通の状態なら『おいしいわ』と思うはずなのに……今はそれぐらいの精神状態なんです」
これは5月15日、9回2アウト満塁のサヨナラ機に凡退した阪神戦終了後のコメントだ(試合は5-5の引き分け)。ラッキーな当たりや内野安打などで数字を稼いでいたが、打率は2割台中盤がやっと。本調子とは程遠い状態にあることは明らかだった。
それでもラミレス監督は、粘り強く梶谷の復調を待った。
「カジタニが復帰してからチームは見違えた。打席で思うような結果は出ていないが、彼の存在自体がチームにとっては大きな意味がある。だから彼がもっと打ち始めたらどうなるか、想像してほしい。ダイジョウブ、ノープロブレムだよ」
指揮官がそう語ったのは5月28日のことだったが、その3日後に幕を開けた交流戦で、梶谷の打撃不振の深刻度は増した。69打数12安打(18試合)の打率.174。空振りが目立ち、通算でも打率は一時2割を切った。あまりの不調に、スタメン落ちが1試合、9番打者に置かれた試合も複数あった。