松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
緊張したマスターズ、フツウの全米。
松山英樹が挑む、優勝への「難所」。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph bySonoko Funakoshi
posted2016/06/16 11:30
メジャーの優勝候補から優勝者までの距離は、人によって大きく異なる。松山英樹にとってその距離はいかほどだろうか。
「わからない」と警戒するには理由がある。
それならば、2つのパー5はどうか? ティの位置が毎日のように変わり、ホールの長さも日によって30ヤード以上変化すると予想されるが、ティの位置次第では2オンが狙えるのかどうか。バーディーのチャンスはあるのかどうか。
「狙ったからといって、バーディーが取れるわけじゃない。飛ぶ人は狙ったらいいと思うけど、僕らの飛距離では、それはどうなのかなという感じはある」
どうも曖昧。少々弱気。こんな返答ぶりは最近の松山にはほとんど見られなかった。だが、開幕前のオークモントでこうなっているのは、1つには彼自身、開幕してからのオークモントがどんな姿になるか、その予想や予測がつかず、「わからない」「どうなんですかね」と警戒しているのだと思う。
そして、もう1つ。どうやら松山はメジャー大会への挑み方、入り方で試行錯誤しているのではないか。
そう思えたのは、彼が今年のマスターズは「悪かった」と言ったときだった。
「今までで一番緊張した」マスターズの失敗。
今年のマスターズでは松山ファン、ゴルフファンのみならず、たくさんの日本人が松山の優勝に期待し、テレビに釘付けになった。最終日は前半で崩れかけ、後半もチャンスを生かし切れなかったが、オーガスタを堂々と闊歩し、見事なプレーを見せた松山に対する世界の評価は間違いなく上がった。
しかし、途中経過や周囲の評価はどうであれ、最終日に手に汗握るような優勝争いができず、7位に終わったその結果は、松山にとっては「悪かった」ことになっている。
今年、オーガスタ入りしたとき、松山は「今までで一番緊張した」と言っていた。いい準備ができた、いけそうだ、やれそうだと思えていたからこそ「一番いい緊張」を感じたのだろう。しかし「マスターズはいい状態かなと思ったら悪かったので。(だから)今は、いい状態かなとは思うけど、気にしてないです」。