詳説日本野球研究BACK NUMBER
中京学院大・吉川尚輝は攻守に派手。
プロスカウトが「うちのよりうまい」。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/06/11 11:30
2016年の野球界は田中正義や吉川尚輝(写真左)ら、「ドラ1候補」の上を行く「12球団1位候補」という言葉が飛び交う逸材揃いである。
ショートのドラ1候補には日本大の京田もいる。
プロのスカウトは一様に「ドラフト1位で指名される」と口を揃える。そういう認識が前提にある上で、注文もついた。日本ハムの今成泰章氏と阪神の中尾孝義氏は、同じショートのドラフト1位候補、京田陽太(4年・日本大)と比較して脚力で劣る分、捕球体勢に遅れが出て、それがスローイングのミスにつながると指摘した。
京田は今季、打率.261と振るわず、私の目にはかなり物足りなく映る。走攻守どの部分を取っても吉川のほうが上回って見えるが、スカウトは「走」は京田、「攻」は吉川、「守」は自在さ華やかさで吉川、堅実さと強肩で京田という互角の評価があるようだ。
「各球団のニーズで評価が変わる」と言うのは日本ハムGM補佐の遠藤良平氏で、遊撃手のニーズがあると名前を挙げたのが西武。1位入札があってもおかしくないが、それが吉川か京田かはわからないという。
同じ大学出身の菊池涼介が模範になる。
京田の春のシーズンの伸び悩みについては、キャプテンになったことが影響していると中尾氏は言う氏。名門復活を宿命づけられたがゆえにチームプレーを必要以上に重視し、プレーから奔放さがなくなったと指摘する。それに対して吉川は、現在広島で活躍する同じ大学出身の菊池涼介が模範となる。
菊池が「きれいな形で正確にスローイングする」という日本式でなく、「より速く打球に追いつき、より速くスローイング(トス)する」メジャーリーグ的な価値観を最上位に置いてプレーしていることは言うまでもない。吉川と京田の2人の背景がプレースタイルの違いとなって表れ、評価を分けているのは面白い。
吉川のバッティングで気になるのは、タイミングの取り方だ。阪神の企画担当・池之上格氏は絶賛する反面、ピッチャーのモーションに対してステップするタイミングが早すぎると指摘する。一流のピッチャーは緩急を操り、打者にタイミングを合わされないように腐心するが、それに対して吉川はストレート対応のタイミングの取り方で終始する。今後の課題と言っていい。