スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
EURO3連覇へ、キーマンはノリート。
スペインが用意する“プランB”とは?
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byAFLO
posted2016/06/09 11:00
多くのクラブを転々とし、代表歴もなかったが、2013年に加入したセルタで頭角を現したノリート。29歳、まさに脂の乗った状態でのEUROになる。
連係、ドリブル、ゴールというノリートの万能性。
デルボスケが用意した「様々なソリューション」は、サイドアタッカーの人選によく表れている。
トップ下タイプはダビド・シルバ1人に絞り、同タイプのフアン・マタやイスコは選外に。代わりにセカンドストライカータイプのペドロ・ロドリゲス、純正ウイングのルーカス・バスケス、そして豊富なアイデアを駆使してサイド攻撃を活性化させるノリートと、それぞれ異なる特徴を持つ選手が選ばれた。
この中でキーマンに挙げたいのはノリートだ。コンビネーションプレーとドリブル突破を巧みに組み合わせ、周囲を生かしつつ自らもゴールを奪うプレーの多彩さは、タレント揃いのスペインにおいてもずば抜けている。
いくらボールを独占しても、肝心のゴールが決められない。そんな手詰まり状態に陥りがちなスペインのティキタカスタイルにおいて、ノリートのプレーはそれ自体が目的となりがちなショートパスの連続に「ゴールを目指す」という明確な意図を与えてくれる。さらにはフィニッシャーとしても決定的なゴールを決めてくれるのだから、頼もしいことこの上ない。
W杯制覇の立役者になったダビド・ビジャに比肩?
個人能力と周囲との連動性を高次元で兼ね備えたそのプレーは、今や全盛期のダビド・ビジャと比較されるほどに評価を高めている。4-3-3の左ウイングでプレーしながら7試合5ゴールを挙げ、ワールドカップ初制覇の立役者となった頃のビジャである。
長年エースの重責を担い、コンスタントに結果を出してきたビジャとは違い、まだ代表キャップ数は二桁にも満たない。初の大舞台となる今大会において、それほどの活躍を求めるのは酷なことかもしれない。
だがそんな周囲の期待と心配をよそに、ノリートは大会直前に行われたテストマッチでもイマジネーション溢れるプレーで見る者を魅了し続けている。