サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
再び現れた「自分たちのサッカー」。
ボスニア戦で露呈した日本の悪癖。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byTakuya Sugiyama
posted2016/06/08 11:30
タテに早く攻める意識はA代表でも際立つ遠藤航。世代交代の旗手でもある彼が、チームの雰囲気をどこまで変えられるか。
やりたいことをやるために、布石を打つ。
ある時間帯においては日本らしさを発揮するものの、最終的な結果にはつながらない。これはもう、何度も繰り返されてきたパターンだ。香川真司と本田圭佑が出場していたとしても、劇的に違うサッカーが展開されたとは考えにくい。
試合後のヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、失点のパターンやゴール前での直接FKが少ないことに触れ、日本のプレーが「正直過ぎた」と話した。個人的には、どうやって相手の守備を崩すのかの手段も正直だと感じる。
やりたいことをやるために違うことをやるという発想が、このチームには感じられない。最終的にはコンビネーションでゴールをこじ開けたいから、意図的にミドルシュートを打っておく。DFラインの背後を、1本のタテパスで狙っておく──。
自分たちの狙いを引き出すためのそんな布石は、率直に言って見つけにくい。
その結果として、相手の守備ブロックへ窮屈な状態のまま突っ込んでしまっている。ボールを失うパターンに、ほとんど違いがないのだ。ボスニア・ヘルツェゴビナ戦も「あと1本パスが通れば」という場面が繰り返され、結局はその1本が通らないまま終了のホイッスルを聞いた。
ハリル就任当初の「タテ」の意識は弱まっている。
だからこそ、ハリルホジッチ監督は「あれ」を持ち込んだのではなかったのか。就任直後に提示した「タテに速いサッカー」だ。
タテパスをはやく入れる意識はうかがえるものの、中長距離のレンジのパスで1トップや2列目を走らせるプレーは、ハリルホジッチ監督就任当時に比べると減っている。W杯アジア2次予選の対戦国が守備重視で臨んできたため、タテに速いサッカーから離れざるを得なかったところはあるが……。
そうだとしても、頭の切り替えが鈍いのではないか。キリンカップはおよそ3カ月ぶりの活動だが、主力クラスは多くの時間を共有してきている。十分な経験を持った選手も揃っている。ボスニア・ヘルツェゴビナの攻略にふさわしいフレキシブルなプレーは、無理なリクエストではなかったはずだ。