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「レーブは時代遅れにならない監督」
ドイツがEUROに持ち込む戦術の数々。
posted2016/06/08 11:00
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph by
AFLO
マヌエル・ノイアーの言葉に、ドイツ代表の強さが凝縮されているだろう。5月29日のスロバキアとのテストマッチ前日、この守護神はアウクスブルガー・アルゲマイネ紙のインタビューにこう語った。
「ヨアヒム・レーブは時代遅れにならない監督だ。多くの監督が自分のスタイルに固執する中、常にサッカーを成長させ続けている。素晴らしい作曲家であり、お手本となる存在だ」
2014年W杯王者のドイツは、EURO2016において開催国・フランスとともに優勝候補の筆頭にあげられている。左FWのロイスが負傷でメンバーから外れ、DFリーダーのフンメルスの復帰が遅れ、さらに長期離脱していたシュバインシュタイガーがどこまで復調するかも未知数だ。ラーム、クローゼ、メルテザッカーのベテラン3人がW杯後に代表を引退し、大会中のリーダーシップにも不安が残る。
レーブが想定する、ドイツが苦しむ2つの戦い方。
それでもドイツの評価が高いのは、サネ、バイグル、キミッヒら優れた若手が次々に出てきているだけでなく、レーブが監督として進化し続けているからだろう。
たとえばレーブは、スポンサーの力を借りて専用アプリを作り、選手が練習メニューを事前に見られるようにしている。デジタル世代の選手たちにとって、すごく効果的なアプローチだろう。
また、スイス・アスコナで行った事前合宿ではドイツU-20代表を呼び寄せ、20分のゲームを計4回行った。その際、レーブは後輩たちに、最初の2本は「前線からハイプレスをかける」ように頼み、ラスト2本は「後ろに引いた状態で守る」ように伝えた。
ドイツはクロースの成長などによって、W杯後も技術レベルが一段と上がっており、パスワークに磨きをかけている。ドイツを苦しめるには、ビルドアップに激しくプレスをかけるか、もしくは自陣深くにブロックを築くか、そのどちらかしかない――。レーブはそう想定し、ドイツU-20代表を使って、シミュレーションを行ったのだ。