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「レーブは時代遅れにならない監督」
ドイツがEUROに持ち込む戦術の数々。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byAFLO
posted2016/06/08 11:00
若い才能が続々と生まれ続け、2014年W杯の優勝を知るベテランも多く残る。ドイツに死角は見当たらない。
SBが人材難なら、3バックにすればいい。
レーブは南ドイツ新聞のインタビューで、こう説明した。
「私は今大会を2つのフェーズに分けている。まず決勝トーナメント1回戦までは、相手が後ろに引いて守ることが予想される。だが、それ以降で当たるチームの戦術は、別物になるだろう。優勝するためには、どちらにも対応できなければならない」
問題を解決するために、レーブはこの2年間、戦術のバリエーションを増やすことに取り組んできた。
すでに2014年W杯で、ラーム(もしくはシュバインシュタイガー)をアンカーに置く「4-1-2-3」、オーソドックスな「4-2-3-1」、そしてゲッツェを最前線に置く「ゼロトップ」という選択肢を持っていたが、さらにオプションが加わった。
たとえば3月のイタリア戦では「3-4-3」を採用して4-1で完勝。ドイツはサイドバックの人材難に悩まされているが、ならばそのポジションをなくせばいいという発想だ。左サイドのヘクターがより高い位置を取ってウィングのようになり、ミュラーやドラクスラーが中に入ってかき回す。ペップ・グアルディオラが率いていたバイエルンを参考にしたモデルだ。
古典的なストライカーを使う力技も。
6月4日のハンガリー戦では、エジルをトップ下からボランチに下げ、トップ下にゲッツェ、最前線に長身のゴメスという「スクランブル布陣」(4-2-3-1)も試している。
ゴメスは2014年W杯ではメンバーから外れたが、今季新天地のベシクタシュで大爆発し、トルコリーグの得点王に輝いて優勝に貢献した。これまでレーブはFWに対して、エジルらとワンツーを交換する巧さや機動力を求め、古典的なストライカーを好んでいなかった。だが、徹底的に研究されるようになった今、相手の守備を力で叩き壊すハンマーも不可欠だ。