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岩田寛を支えるチームと“兄貴分”。
ヒゲを剃り、笑顔が増えたその理由。 

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舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

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photograph bySonoko Funakoshi

posted2016/06/07 10:30

岩田寛を支えるチームと“兄貴分”。ヒゲを剃り、笑顔が増えたその理由。<Number Web> photograph by Sonoko Funakoshi

メモリアルトーナメントの練習場で、談笑する「チーム岩田」。ゴルフ界では最近「I」ではなく「We」を主語にする選手が増えている。

若く見られまいとたくわえていたヒゲを剃る。

 そして4月末。テキサスオープンに挑もうとしていた岩田のところへ一郎さんがやってきた。

「チームのみんなが腫れ物に触るような状態で驚きました。みんな言いたいことも言わず、下を向いていた。だから僕は寛にもみんなにも言ったんです。たまにはリフレッシュしろ、コミュニケーションを取れ、いっぱい笑えってね」

 選手と、選手をサポートするチーム。どちらも大切だが、一郎さんの持論は「まずチームを良くすることが先決」。

 翌週、チーム岩田の構成メンバーであるキャディ、トレーナー、マネージャー、ツアーレップらはミーティングを開き、本気と本音で岩田を支える方策を事細かに話し合ったそうだ。

「寛さんは予選落ちするとホテルの部屋にこもって出てこなかったんですけど、アウトレットや野球観戦に連れ出したりするようにしました。そうしたら同じ予選落ちでも、少しゴルフが上向いたんです」と、マネージャーの乾芽衣はうれしそうに振り返った。

 リフレッシュ計画を遂行し始めた直後は3試合連続で予選落ちだったが、1週間の空き週を経て挑んだ5月のバイロン・ネルソン選手権からは、逆に3試合連続で予選を通過。

「寛さん、いつの間にかアゴのヒゲを剃っていたんです。あるとき『あれっ? ヒゲがない?』って気付いたら『遅いよ!』ってムッとしてました」

 チームの変化を感じ取り、岩田自身も何かを変えよう、変わろうとしていたのだろう。年齢より若く見られるのが嫌でたくわえていたヒゲを思い切って剃り落したのは、肩肘を張らず、ありのままの自分で勝負しようという決意の表れだった。

コンビを組んだ9年間で初めてのケンカ。

 珍しい事件が起こったのはバイロン・ネルソン選手権とディーン&デルカ招待で予選通過を果たした後に挑んだメモリアル・トーナメント初日のラウンド中だった。

 ドライバーショットを池に落とし、ドロップ後の第3打も池に落としてダブルボギーとなった5番を終え、6番のティグラウンドへ向かう途上、岩田とキャディの新岡隆三郎が言い合いになった。

「なぜスプーンを持たせなかったのかという話から始まって、でも(新岡キャディは)納得せず、(ヤーデージブックの)メモがあったでしょって感じで言い合いになった」

 コンビを組んだこの9年間で初めてのケンカだった。

【次ページ】 岩田の「任せたよ」に応えた必死のメモ。

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岩田寛

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