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岩田寛を支えるチームと“兄貴分”。
ヒゲを剃り、笑顔が増えたその理由。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph bySonoko Funakoshi
posted2016/06/07 10:30
メモリアルトーナメントの練習場で、談笑する「チーム岩田」。ゴルフ界では最近「I」ではなく「We」を主語にする選手が増えている。
岩田の「任せたよ」に応えた必死のメモ。
新岡を「三郎さん」と呼ぶ乾マネージャーが、こんな秘話を明かしてくれた。
「三郎さんは寛さんから『今週は任せたよ』って言われて、一生懸命コースチェックしていたんです。(この試合の翌日に挑む)全米オープン予選会のほうのコースチェックも火水でやって、メモリアルのコースチェックは夜の10時まで一人で歩いてやっていた。そこまで頑張って三郎さんが必死に書き入れたメモを、あのとき寛さんは見なかった。だから三郎さんは、どうしても我慢できず、言い返したんです」
岩田も、それはわかっていた。
「僕が悪かったな、コミュニケーション不足が池につながったんだなと思った」
照れ臭かったのだろう。「ごめんね」なんてストレートな言葉はついに発しなかったそうだが、自然に仲直りした2人は翌日名コンビぶりを発揮して、前半5連続バーディーを奪う快進撃で67をマーク。初日の107位から2日目は62位へ一気に順位を上げ、予選落ちの危機を決勝進出へ転換した。
「キャディと初めてケンカして、そこからいい方向に行ったかな」
選手とキャディ。それぞれのプロ意識、本気と本音のぶつかり合いが、珍しい雨を降らせ、しっかりと地を固めた。
一度崩れたら終わり、という状態は過去のものに。
少しずつ岩田もチームの面々も前向きな気持ちになり、いいムードで迎えた決勝2日間。しかし、何もかもがトントン拍子に進むほど米ツアーは甘くない。
3日目はラウンド半ばで6つのバーディーを奪い、あと1つ伸ばせばトップ10圏内というチャンスに迫りながら、終盤で3つスコアを落とした。最終日も伸ばして落とす結果となり、最終順位は46位。
しかし、たった1つのミスに激昂してそこから崩れたり、一度崩れたら集中力を取り戻すことができずに終わっていた今季序盤と比べれば、「初日に予選落ちと思ったところから(2日目に巻き返して)4日間をプレーできた」ことは大きな進歩だった。