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貫けなかったサーブと守備システム。
男子バレー、本当は勝ち筋があった!?
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byAFLO
posted2016/06/07 11:00
決め打ちでブロックに飛ぶ、という方法には勇気がいる。それでも、体格で劣る日本が勝つには必要な作戦だったのではないか……。
ポーランド戦の先発から外れた柳田。
そして翌日、チームは改めて意思統一をした。石川は言った。
「ミスとか関係なく、自分たちのサーブがやっぱり日本は武器だと思うので、チームで固まって、自分と柳田さん、清水さんは攻めていく、というのを確認しました」
ところがポーランド戦の先発からは、チーム一のビッグサーバーである柳田が外れた。
ポーランドは2014年の世界選手権王者で、現在世界ランキング2位の強豪。今大会の中でも特にサーブで崩さなければならない相手だったのだが……。
柳田のコンディション低下が理由だったというが、結局、第1セットを取られた後に柳田は投入された。
「やはりポーランドは、サーブで相手をCパス(相手が二段トスになる状況)以上に崩さなければブレイクを奪えなかったので代えた」と試合後、南部監督は説明した。
2年間かけてシステムは作り上げていた。
ブレは大会前から生じていた。たとえばブロックとディグ(スパイクレシーブ)のシステムだ。
南部監督は昨年までの2年間、ブロックとディグの組織作りに多くの時間をさいた。高さのない日本は、トスを見て反応するリードブロックだけでは相手の攻撃を封じることは難しいからと、「オプション」という割り切ったブロックシステムを取り入れてきた。
指揮官は「全部の攻撃を止めることはできないので、どこかを捨ててでもどこかに絞る。日本は思い切ったことをやらないと勝てない」と語っていた。
たとえば、データ上相手のレフト攻撃が多いローテーションの場合は、そこに近いサイドブロッカーとミドルブロッカーの2枚があらかじめそちらに走るなど、大胆に仕掛けるシステムだ。状況によってブロックとディグの位置取りが細かく決まっており、それが体に染み付くよう練習を繰り返した。
日本はブロックの本数では勝負できないが、ワンタッチを取ってつないだり、ブロックを抜けたコースを拾って、それを点数につなげられるようになり、昨年のワールドカップで選手たちは手応えを得ていた。
ところが今年の全日本では、そのオプションをあまり練習しなくなった。大会が始まっても、前半戦はベンチからのオプションの指示はほとんど出なかった。日本はブロックもディグも機能せず淡白な試合展開となった。身長差がある上に、昨年まで力を入れていなかったリードブロックでいきなり今大会の相手に対抗するのは難しかった。