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高校球界に150km右腕が新たに2人!
島孝明と藤平尚真の“大物比べ”。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/05/30 10:30
最速150kmを記録した東海大市原望洋の島孝明。高校球界の最強右腕に名乗りをあげた。
マウンドでは大きく見える石川翔。
石川は、存在を今回初めて知った選手だ。試合開始前の投球練習で、球場のスピードガンに140キロ、142キロと表示されたのを見てあわてて選手名簿で確認すると、2年生右腕で身長は178センチとある。マウンドではもっと高く見えるが、試合後にインタビューされている姿を見ると175センチくらいにしか見えない。いかにマウンド上の姿が立派かということである。
この前橋育英戦の結果は、2回3分の1を投げて被安打3、与四死球3、失点4と散々だったが、ストレートは最速146キロを計測し、真縦から落ち込んでくるスライダーの迫力も一級品。左肩の早い開きもなくコントロールも悪くない。だがスピードに酔ってストレートを続けた結果、3番打者に142キロをレフトスタンドに放り込まれ、ここからすべての歯車が噛み合わなくなったという印象だ。
何も懸かっていないからこそ、新戦力を試せる。
浦和学院の1年生左腕、佐野は荒々しく腕を振って高め主体にストレートを投げ込んでくる姿が、阪神の岩貞祐太に似ている。スピード表示のない桐生球場での登板だったので何キロ出ていたのかわからないが、ストレートには打者のバットを押し返すような勢いがあり、140キロ以上は出ていそうだ。
この佐野を、4-2でリードした7回途中から起用したことが結果的に見れば浦和学院の敗因となった。
1死一塁の場面でバント処理を焦った佐野は、一塁に高投して一、二塁。さらに牽制悪送球で一、三塁とし、8、9番打者に連続タイムリーを喫して同点。8回1死走者なしの場面で3番手にマウンドを譲り、この投手が打たれて敗れた。先述の島、石川と同じく佐野も課題を残したかたちだ。
関東大会など春の地区大会のいいところは、この大会の勝敗がその後の何物にも結びつかないという点にある。夏の大会のシード権はそれ以前の都道府県大会で決まっていて、甲子園大会の出場権も関係ない。要するに1、2年生などの新戦力をレベルの高い相手にぶつけて力試しができるというのが、指揮を執る監督にしても、高校野球ファンにしても最大の魅力なのだ。