ブンデスリーガ蹴球白書BACK NUMBER
香川真司が新たな役割で輝く理由。
ポジションやスタイルより重要な事。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2016/04/22 10:30
長いトンネルを抜け、新たなポジションで輝きを取り戻した香川真司。アタッカーとしての能力はやはり高い。
改めて香川が求める「はっきりとした個性」。
悩み、考えて、自分の新たなポジションやプレースタイルにたどりついたと思ったら、それがチームにとって必要ないものになってしまった。あるシーズンで活躍した選手が、シーズンが変わったり、監督が代わったりすることで、その面影がないくらいに沈んでいくというのもサッカーの世界ではよくあること。今年に入ってから香川の身に降りかかったのもまた、サッカー界の常識から大きく外れたものではなかった。
香川はいま、自分に必要なものはポジションやスタイル以外のところにあるのではないか、と考え始めている。
「はっきりとした個性が、このチームの一人ひとりにはあるなということを感じます。そのなかで自分は、守備も、攻撃も、運動量も、技術面でも割と起用にはこなせています。それは良いことではあるけれど、自分の武器であったり、自分のゾーンであったり、ここに入った時には、この場所では一番というような、『強み』は……。
やっぱり、何か一つ究めていかないと。上手く試合の流れに乗ることも必要ですけど、最後のところの違いである『強さ』が、まだ、足りない」
トゥヘル体制はまだ1年目、向上の余地は十分にある。
トゥヘル監督も、何も守備的なチームを作ろうとしているわけではない。実際に彼はリバプールに敗れたあとに、こう話している。
「来シーズン、我々は攻撃力のあるチームになるんだ!」
現在のドルトムントは、2冠を達成し、当時のリーグ最多勝ち点記録を打ち立てた2011-12シーズンを上回るペースで勝ち点を積み上げている。つまり、クラブ史上に残るチームなのだ。
それでも、今はまだトゥヘルが就任した最初のシーズンに過ぎない。向上の余地は十分にあるし、色々な局面で改善していく必要がある。実際、リバプールに敗れたEL準々決勝では、「再生」の作業ですらまだ十分ではないという現実を突きつけられた。
そのなかで、チームが苦しい時にチームメイトやファンが頼りたくなるような『強さ』を探す作業を香川は始めている。
もちろん、すぐにつかめるものではない。ただ、そこに向けて確実に歩みを進めてはいる。
そう感じさせてくれたのが、76223人のファンで埋まったベルリンのオリンピア・シュタディオンで行なわれた準決勝だったのである。