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香川真司が新たな役割で輝く理由。
ポジションやスタイルより重要な事。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2016/04/22 10:30
長いトンネルを抜け、新たなポジションで輝きを取り戻した香川真司。アタッカーとしての能力はやはり高い。
攻撃の際に残る人数を増やしたことで、前に影響が。
2016年の序盤は4-3-3を基本としながら、4-2-3-1や相手のサイドバックの攻撃を防ぐためにセカンドトップではなくウイングを配した4-3-3も取り入れていった。
そして、シャヒンが復帰した2月18日のポルトとのEL決勝トーナメント1回戦からは、「再生」の作業を本格化させる。攻撃時には3-2-4-1、守備時には4-4-2や4-2-3-1のような形になるフォーメーションを基本として戦うようになった。
目に付きやすい変化を挙げるなら、攻撃の際に後ろに残る人数だ。以前は相手ボールになったときに低い位置に残っているのは2人のセンターバックとアンカーの3人だったが、センターバックの3人とボランチの1人の計4人になった。試合によって例外はあるにせよ、相手のカウンターに備えられる人数を増やし、守備への意識を高めることが目的だった。
その過程で、選手たちは戸惑いを隠せなかった。「勝っているから、(チームとして)もっと気持ち的な余裕があってもいいんですけど……」と香川も話していた。あれだけ多くのゴールが生まれ、サポーターも興奮しているのに、何を変える必要があるんだろう、と考えるのも当然だろう。
インサイドハーフのポジションは消えた。
しかし、「再生」作業の効果は確かにあった。
リーグ戦の1試合あたりの平均失点は大幅に減り、前半戦の1.35点から、後半戦の0.53点へと、半分以下になった(平均得点も2.76点から1.92点に減ったのだが)。
そして、その効果はチームの成績に直結した。
2016年に入ってから4月14日にリバプールに敗れるまで、18試合にわたって公式戦無敗を続けた。実際、リーグ後半戦の13試合を終えた現時点では、後半戦だけの成績ではバイエルンを抑えてリーグトップに立っている。
その過程でドルトムントから、香川が新たなポジションだと考えていたインサイドハーフのポジションはなくなった。
純然たるトップ下か、2シャドーの一角。後半戦の香川に与えられたのはそういうポジションだった。
日本代表のアギーレの下で初めて務め、今シーズンの前半戦で任されていたインサイドハーフというポジションに。香川が楽しさとやりがいを見出していたのは事実だ。
「1回リズムを作って、後ろから組み立てに参加して入っていったほうが前向きに、スピードに乗ってゴール前に入れますから」