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香川真司が新たな役割で輝く理由。
ポジションやスタイルより重要な事。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2016/04/22 10:30
長いトンネルを抜け、新たなポジションで輝きを取り戻した香川真司。アタッカーとしての能力はやはり高い。
マンU入団会見で「トップ下」と宣言した過去。
しかも、インサイドハーフに取り組むまでに、香川のなかで葛藤に似たものがあったことを忘れてはいけない。
香川はかつて、マンチェスター・ユナイテッドの入団会見でファガーソンの隣で、世界中のメディアに、自分のポジションはトップ下であると宣言した男なのだ。実際、シーズン序盤戦のころには、こう語っていた。
「もちろん、確固たる自分は必要です。ここ2、3年はトップ下とかにこだわるというか、そのポジションこそが自分に合っているポジションかなと思っていました。
でも、サッカーのスタイルもどんどん変わっていくなかで、自分もいつまでも昔のままでは生き残っていけないんですよ」
腹をくくって取り組んでいたインサイドハーフというポジションが、「再生」の言葉の下にドルトムントから消えた。
そこに、香川の憂鬱の原因はあった。
2シャドーの一角で、伸び伸びとプレーする姿が。
しかし、ヘルタとのドイツ杯準決勝ではロイスと並ぶ2シャドーの一角で躍動し、味わった憂鬱が過去のものであるとプレーで示した。先制点の起点となる右サイドの裏にぬける動きについても、監督から求められたものではなく、ヘルタの守備を見て、考え、感じ、選んだ末のプレーだった。
「(チームとして)そういう狙いではなかったですけど、ただ、流れのなかで。もちろん、裏をとれたらベストですからね」
今年2月頃、2シャドーの一角に窮屈さを感じていた香川はもういない。
「ここまでは上手くいかなかったり、試合に出られない時期もありましたけど、まぁ、そういう時期も乗り越え……」
ヘルタとの試合の後、香川はそう切り出した。そして、苦境を脱する糸口をつかめた理由についてはこう説明した。
「長いシーズンのなかではそういう時期もあるかなと思っていましたけど、予想以上に長く感じました。もちろん、フラストレーションがたまる時間はたくさんありましたよ。ただ、そこでふてくされたり、やる気をなくしたら終わりだと思っていましたから。
あとは、チームが勝っていたので。それは、受け入れるしかない。そういうことを自分に言い聞かせて毎日トレーニングするしかなかった。そして、その繰り返しの結果、良い流れになりつつある。『自分がやるんだ』という強い気持ちを持って今はやれています。そういうメンタリティがすごく大事なんだなということを経験しましたね」