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香川真司が新たな役割で輝く理由。
ポジションやスタイルより重要な事。
posted2016/04/22 10:30
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
AFLO
首都ベルリンの夜に、香川真司の憂鬱が終わりをつげようとしていた。
ドイツ杯準決勝で、ドルトムントはリーグ4位につけるヘルタ・ベルリンを攻守で圧倒した。3-0で勝利をつかみ、3年連続の決勝進出。そして、2シャドーの一角に入った香川は、ロイスへのアシストを含めチームの3ゴール全てに絡む活躍を見せた。決勝で待つのはバイエルンだ。
2016年に入ってからの香川は、前半戦のパフォーマンスが遠い過去のものであったかのように、低空飛行を強いられていた。スタメンはおろか、途中出場さえかなわないことも多かったし、ベンチから外れた試合もあった。
その理由としては、香川のポジションがなくなったことがやはり大きい。
シーズン後半戦に入ってすぐ、トゥヘル監督は力強く宣言した。
「我々は再生するんだ!」
リーグ前半戦が終わった時点でドルトムントは47ゴールを決め、昨シーズンのリーグ戦1年間で決めたゴール数に並んだ。新監督のもとで、チームは再建されたように見えた。
しかし、指揮官は大きな問題点を見出していた。
守備のもろさについて、だ。
香川にとって4-3-3のインサイドハーフは心地よかった。
前半戦が終わった時点で、ドルトムントは23失点。これは最下位でシーズンを折り返したホッフェンハイムと2点しか違わないし、首位バイエルンよりも15失点も多い。
確かに、攻撃の質は昨シーズンと比べて飛躍的に向上した。引かれた相手を崩せずに前がかりになり、カウンターから失点してしまうのではないかという選手たちの恐怖も払しょくされた。
シーズン前半戦では基本的にフォーメーションを4-3-3で固定し、トゥヘル監督は引かれた相手を崩す術を授けていった。その過程で、3トップの一角に固定されたムヒタリアンや、所属クラブで初めてインサイドハーフというポジションを任されるようになった香川も、心地よさを覚えていた。
しかし――。
前半戦が終わった時点で得点数ではバイエルンを1点上回ったとはいえ、このままではバイエルンの背中にはいつまでたっても手が届かない。
そこでトゥヘルは守備に手を加えたのだ。