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サッカー、いや教育関係者必読の書。
早熟な才能と「根性」の不都合な関係。 

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木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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posted2016/04/25 10:30

サッカー、いや教育関係者必読の書。早熟な才能と「根性」の不都合な関係。<Number Web> photograph by Getty Images

アンカーセンは『The DNA of a Winner』、『Leader DNA』などの著作があり、講演活動も行なっている。

すぐに実践できるイメージトレーニング。

 日本サッカー界でも、10代で天才と呼ばれた選手がプロになってから伸び悩むケースが多い。その一因は、若いときに才能を褒めすぎることにもあるのだろう。もしチヤホヤするとしても、努力を褒めるべき。「才能があっても成功しないのは、ごく当然のことだ」(第30代アメリカ大統領、カルビン・クーリッジ)というスタンスくらいがちょうどいい。

 アンカーセンの本は学術的な実験例に富んでおり、すぐに実践できる練習法も載っている。たとえばイメージトレーニングだ(専門的にはビジュアライゼーションやメンタルプラクティスと呼ばれている)。

 シカゴ大学のジャッド・ブラスロット教授の実験では、バスケットボールのフリースローをボールに触らず、イメージの中で思い浮かべる試みをしたところ、精度が23%アップした。ハーバード大学の神経学者アルバーロ・パスカル・レオーネの研究では、ピアノでイメージトレーニングを行ったところ、5日間で実際に鍵盤を触ったのと同じ神経回路が形成された。

 日本代表の本田圭佑がイメージトレーニングを重視するのは、的外れではないらしい。子供のときから、どんどん実践すべきだろう。

「根性」という古臭い概念が、実は成功の鍵。

 日本サッカー界として励まされるのは、同書が「根性」を成功の鍵のひとつにあげていることだ。

 アンカーセンはこう綴った。

「(ペンシルベニア大学心理学部准教授のアンジェラ・ダックワースとマーティン・セリグマンは)偉業を成し遂げた人物は唯一の使命に対する情熱と、どれだけ時間と労力がかかろうが、その使命を達成するための揺るぎない努力を結びつけていることに気づいた。そしてそれを『根性』と呼ぶことにした」

【次ページ】 理論的なトレーニングを避けるケニアのランナー。

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ラスムス・アンカーセン

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