ニッポン野球音頭BACK NUMBER
反対を押し切って習得した“逆方向”。
筒香嘉智、本塁打量産の秘訣。
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/04/20 11:00
4月10日のヤクルト戦、5号ホームランを左のスタンドに打ち込んだ筒香。試合後は「曲げずにやり続けてきてよかった」と語った。
3年かけて実を結んだ打撃。
今季7年目を迎えるプロ生活で、自身に最も大きな影響を与えたという「2年目のオフ」。自主トレの場所として選んだアメリカで、筒香は国籍の異なる選手たちの姿に刺激を受け、「逆方向をちょこちょこ意識し始めるようになった」という。
185cm、97kgの堂々たる体格ゆえ、筒香には左の大砲として大成することが当時も今も期待されている。逆方向への意識を強めるということは豪快に引っ張るフルスイングとは正反対の打撃スタイルであり、ホームランバッターとしての周囲の期待に逆らうかのような選択とも言えた。
それでも「3年間は絶対かかるだろうけど、きっちりやっていこうということで始まった」取り組みは、その読み通り、3年後に結果としてあらわれた。2012、2013年と2年連続で打率2割1分台に低迷した筒香だったが、アメリカでのトレーニングを経験してから3年目の2014年に打率.300をマーク。さらに昨季は打率.317、24本塁打、93打点と打撃3部門すべてでキャリアハイの成績を残した。
逆方向への追求がもたらしたのは、ホームランを犠牲にする小さなバッティングではなく、「ホームランと確実性の両立」という果実だったのだ。
「こういうスタイルでもどこかぱちんと合う時がくる」
一発が魅力の長距離砲か、それともチームバッティングに徹する巧打者か。いったいどっちが本当の筒香さんなんでしょう? そんな疑問をぶつけると、24歳は表情一つ変えずに言った。
「打率2割2分で、ホームラン40本打ってくれ。それでいいって言われるんだったら僕も狙いますよ。でも、果たしてそれがチームのためになるのか。僕はクエスチョンマークがつくのでやらないです」
そして、こう言葉を継いだ。
「大事なのは打点だと思っているので、よっぽどのことがない限りはホームランを狙って打席に立つことはありません。でも、こうやって続けていけば、こういうスタイルでもどこかぱちんと合う時がくるなっていうのは感じてます。合った時に、このスタイルのまま、もっとホームランが出だすんじゃないかなって僕は考えてますけど」