炎の一筆入魂BACK NUMBER
たった5球で3連戦の流れを変えた男。
広島・今村猛が目指す「新しい自分」。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byNanae Suzuki
posted2016/04/15 10:40
2009年のセンバツを制覇した公立高・清峰(長崎)のエースだった今村。広島に来ても、そのガッツは誰にも負けない。
過去に戻るのではない――新しい自分になるんだ!
周囲は今も、世界を相手に戦った当時の投球を期待している。
今村は、自分の残像とも戦っているのだ。フォームを見つめ直し、徹底的に走り込み、そして必死で投げ続けてきた。
「当然毎年毎年、体は変わってくる。その中でベストな投球を追い求めている。あのときのような球は投げられないかもしれない。でも経験させてもらったものは、確実に残ってますので」
言葉には今もプライドがにじむ。
過去の自分に戻りたいわけではない。新たな自分を作り上げるために、やっているのだ。
今季はまだ、安定したポジションは与えられていない。それでも、不格好でも、必死にもがきながら自分にとっての小さな流れを生み出そうとしているのだ。
「とにかくどこかを任せてもらえれば、という思いはある。どこでもやりますよ、僕は。今は(何でもこなす)便利屋かもしれないですが、それでもいいんです」
この必死の覚悟がある限り……今村には、いつかきっと大きな流れの中に身を置く日が訪れるはずだ。