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オープン戦絶好調で一時は4割到達!
川崎宗則が「ひらめいた」新打法。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byGetty Images
posted2016/03/31 10:50
3月29日にはオープン戦初本塁打も記録。同日までの打率は3割8分1厘といつメジャー昇格してもおかしくない。
チームの主砲と一緒になった練習で「ひらめいた」。
川崎が「控え選手が故障した時の代役」と見られているのはそのためで、首脳陣がラステラかバイエズのどちらかがいなくても、「内野の控えは一人で充分」と考えれば、川崎が穴埋めに起用されることもない。
実は川崎がカブスとマイナー契約した時、旧知のカブス番記者の何人かが異口同音に「内野の層が厚いこのチームでは、控え選手として食い込むのも簡単じゃない」と言っていた。ところが3月26日、オープン戦も残すところあと1週間という段階になって取材に行くと、こんな風に変わっていた。
「ラステラは怪我から復帰したが、今度はバイエズが左の親指を傷めた。穴埋めの最有力候補は川崎ではないのか?」
そう地元記者に問われたマドン監督は、こう答えている。
「オープン戦では攻守両面だけではなく、バントや走塁といったことでも本当にいい仕事をしている。彼が選択肢の一つであることは間違いないよ」
その日の試合でも、川崎は存在感を示した。ジャイアンツの先発はジェフ・サマージャ。4回までわずか1安打にカブス打線を抑えていたが、5回2死走者なしから打席に立った川崎が、左中間を真っ二つに破る二塁打で出塁。後続の適時二塁打で生還したのである。
「振ったら飛んで行ったから、まぐれではないですけど、まぐれっぽいですよね」
と川崎。実はこのキャンプ、川崎は2年連続30本塁打以上の主砲アンソニー・リゾと打撃練習をする機会が多かったらしく、そこで例の如く「ひらめいた」らしい。
「打球、速いでしょ? リゾと一緒にケージ(室内打撃)を打つことが多くて、またちょっと打ち方をひらめいた。発想の転換ね」
正直なところ、試合前の打撃練習には驚かされた。川崎が右足を大きく踏み込む。体が鋭く回転し、捉えた打球が面白いように右翼場外の防球ネットに突き刺さるのだ。それも1度や2度ではない。
「いい感じですけどね。良い時も悪い時もあるんで特に気にはしないですけど、今は良いんで何も考えない。きっちり悪い時も来るんでその時に考える」
シカゴで最も人気のある選手になれるか。
残念ながら3月29日、カブスは川崎のマイナー開幕を前提とした動きの中で契約を解除し、再契約を結んだ。
「チームからクビだよと言われた。自分では分かっていたつもりだけど、傷ついた」
日本のメディアにそう語った川崎。マドン監督は地元紙にこう語っている。
「彼(川崎)はいつかチャンスを掴むだろうし、我々を助けてくれる。彼は我々の成功の大きな一部となるだろう。そして彼がいつか(メジャーに)やって来た時、今までシカゴでプレーした選手の中で最も人気のある選手になるだろう」
ムネリンこと川崎宗則は、今年もまた、逆境をはね返してくれるはずだ。