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6つのポジションでプレーしてる!?
南野拓実、驚異のポジティブ思考。 

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ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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posted2016/03/23 10:50

6つのポジションでプレーしてる!?南野拓実、驚異のポジティブ思考。<Number Web> photograph by AFLO

3月5日のグレーディヒ戦、後半36分から出場した南野は今季9点目となるゴールを決め、3-0勝利に貢献した。

チアゴのピッチ内外での貢献。

 前半5分にいきなりの先制点を叩き込まれたあとには、タッチライン際まで出て、チームメイトを鼓舞した。主審や副審の不可解なジャッジがあれば、ベンチを飛び出し、異議をとなえる。0-2で後半を迎えると、ボールボーイよりも早くボールを拾いに行くようになった。

 そして、後半ロスタイムにミュラーの同点ゴールが決まった際には、ピッチに飛び込み、アップをしていたサイドとは逆サイドに広がる歓喜の輪に加わった。主審だけではなく、ダグラス・コスタにもピッチを出てアップエリアにもどるようにうながされていたほどだ。

 そして、延長前半11分にリベリーに代わり、ようやく出場のチャンスを得たチアゴは、延長後半3分に決勝ゴールを叩き込んだのだった。

 南野は先にあげたグラーツ戦だけではなく、後半42分からの短い出場に終わったアルタッハ戦でも、ウォーミングアップの途中にガルシア監督のかたわらに置かれた水を飲みにいっている。

「自分は準備できているんだぞ、早く使ってくれ」

 バイエルンとユベントスの死闘を見たという南野に、ベンチ前まで給水に行ったのは監督の目に入るようにするためだったのか、と問うと、笑顔でうなずいた。

「自分は準備できているんだぞ、早く使ってくれ、という意味ですよね」

 与えられたポジションでゴールを目指す。ベンチからのスタートを命じられれば、試合に出る準備があると行動で示す。もちろん、それですぐに出場時間が増えるわけではない。

 しかし、南野は気持ちが折れることもなければ、ネガティブなこととは無縁でいる。簡単なようで、簡単ではない。21歳になってから2カ月余りの若者が、そうした姿勢を貫けることにある種の恐ろしささえ、覚える。

 今回の五輪代表遠征の最後の試合となるスポルティング・リスボンとの試合は月曜日に組まれているため、それが終われば、火曜日のザルツブルクの練習に参加することもできる。日曜日に行なわれる、リーグ優勝の行方を左右する大一番を前に準備する時間は十分に残されている。

 シーズンのクライマックスでは、数cmの攻防や、ちょっとした気持ちの差が勝負をわける。南野の誇るハートの強さと、それが後押しする行動が、ヨーロッパの舞台でどれほどの価値を持つのか。その真価は、ここから問われることになるのだ。

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