畠山健介のHatake's roomBACK NUMBER
畠山健介語る英国ラグビーデビュー。
娘の手紙と、スパイク一杯のビール。
text by
畠山健介Kensuke Hatakeyama
photograph byKensuke Hatakeyama
posted2016/03/19 10:30
ファルコンズの頼れるキャプテン、ウィルとニューカッスル市内のカフェで。ラガーマンに国境はない。
歳を重ねたからこそのポジティブな思考。
この時の僕は比較的、冷静だった。もちろん多少の緊張はしていたが、不思議と落ち着いていた。
理由は、まず勝っているというのが大きい。1トライ1ゴールの7点でも追いつけない点差で勝っていることが1つ。あとは、15分という時間。15分は決して短くはない。レスターのような強いチームなら十分逆転出来る点差。しかし、ホームスタジアムという地の利があり、今日のファルコンズのパフォーマンスなら十分守りきれると感じた。
もちろん、自分が余計なミスさえしなければ。しかしその「ミスしなければ」という感情すら浮かばないほど、程よい緊張と落ち着いた感情を保ったまま試合に入れた。これは若い時では出来なかったかもしれない。メンタルセット、歳を重ねる、経験を積む、失敗したことがあるからこそ生まれる「次に何をしなくてはいけないか」というポジティブな思考。これらは僕にとって貴重な武器だ。
ロッカーでイングランド流の歓迎セレモニー!?
15分はあっという間だった。何度か危ない場面もあったが、仲間の集中力とパフォーマンス、ファンの声援、全てがレスターにプレッシャーを与えた。結果、26-14でファルコンズ勝利。強豪レスターに7年ぶりの勝利だった。
僕のボールキャリーは2回、タックルは3回ぐらいかな。一番心配だったスクラムは1回だけだった。決して多くはないプレー時間、プレー回数だったが、怪我なく勝利に多少なりとも貢献できてよかった。それ以上にチームが勝利出来たことが一番嬉しかった。
ノンメンバーもスタッフも決して広くはないロッカーに皆で入り、勝利を喜びを分かち合った。ディレクターのディーン(・リチャーズ)が「よくやった」と選手を讃え、この日のマン・オブ・ザ・マッチを発表。この日はニリ(・ラトゥ/元NECのトンガ代表フランカー)が選ばれた。
その後、主将のウィル(・ウェルチ/フランカー)が「今日はハタケのファルコンズ、ファーストキャップ(初めての試合)だ!」と言って、誰のか分からない使用済スパイクにビールを注ぎ、渡してくれた。皆が拍手と歓声をあげながら、スパイクのビールをこぼしながら飲み干した。