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青木宣親「普通にやれば数字は残る」
昨年は死球で逃した3割200本安打へ。
posted2016/03/20 10:40
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph by
AFLO
雲ひとつない青い空。乾き切った空気。そして、頭上から照り付ける日差し。アリゾナ州ピオリアに今日も元気な声が響く。
「ヘイ、ノリ! ちょっとセンターで守備練習しようぜ」
打撃練習を終えて球拾いをしようと思っていたマリナーズの青木宣親にそう声をかけたのは、マニー・アクタ三塁ベースコーチである。シアトル・マリナーズの春季キャンプ。アクタはフリーエージェントで加入した新しい左翼手を中堅のポジションに連れ出すと、マンツーマンでノックを始めた。
アクタはメッツのコーチ時代、2006年の日米野球で来日したことがある。インディアンス監督時代にはシーズン途中に福留孝介外野手(現阪神)を迎え入れたこともあり、日本人の“扱い”には慣れている。もちろん、ある種のリスペクトとともに。
「俺のお気に入りの日本人選手は、ノリでもイチローでもコウスケ(福留)でもないよ。オガサワラ(小笠原道大)だ。日米野球の時、とんでもないフル・スイングをして俺たちを驚かせた日本人。それがオガサワラなんだ」
そう言いながら快活に笑う47歳は、普段は青木やレイオニス・マーティン中堅手、クーテル・マーテイ遊撃手といった小技の利く選手たちのグループの監視役である。と言ってもここはメジャーリーグ。手取り、足取り教えたりはしない。打撃練習中も、ネット裏で時々様子を伺う程度。青木とのマンツーマンのノックも、他にやることがないので青木を守備練習に誘い出したように見えなくもなかった。
対左投手打率が高い青木は、出場機会も増える。
が、もちろんそんなはずはない。
「左打ちのマルティンは、相手の先発が左投手の時はベンチに引っ込めなきゃいけない時がある。アオキも同じ左打者だけど、彼は左投手をまったく苦にしないどころか、得意にしているようだから、公式戦では彼が中堅を守る機会も多いと思う」
マルティンはキャリア通算の対右投手打率が.263に対し、対左投手打率は.233と苦手にしており、メジャーでの対左投手打率が.333の青木には敵わない。公式戦を想定した練習であることを強調したアクタはそこでまた、快活に笑う。
「彼(青木)が疲れてるのは分かってたけど、他に時間を作ることは出来ないし、こういうチャンスを有効に使いたかったんだよ」